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公爵令嬢、ロゼリア・アノニマスには前世の記憶がある。
日本という国で生まれ育った前世の自分が、いつどのようにして生を終えたかは
それは聖竜と呼ばれる神が守護する国、レイデルを
ゲームに登場する悪役令嬢ロゼリア・アノニマスは、実に噛ませ犬と呼ばれるに
ゲームのシナリオと同じような出来事がその身に降りかかったのは、一週間前。婚約者のレオンハルトが私的に開いた夜会でのこと。
「ロゼリア・アノニマス。お前との婚約を破棄する!」
そう言われた直後、ロゼリアはまるで頭を
「まず、理由をお聞かせください」
それは
ロゼリアはレオンハルトに
彼女は『聖竜姫伝』のヒロイン、アイラ・シーカー。平民でありながら貴族の子女が
ぱっちり二重の若葉色の瞳。短く波打つチョコレート色の髪は、
性格もどちらかといえば、従順で大人しそうな印象に見られるが、学院生活においては……。
「
「あら、
大方、ロゼリアに不満がある
「確かにわたくしは彼女にマナーがなっていないと注意したことがあります。しかし、彼女自身もマナーの授業を受け、わたくしに再三注意されていたにもかかわらず、
ロゼリアがアイラを
貴族の慣習に
「私や生徒会役員達が彼女を特別視していることにも不満があると聞いているが?」
「彼女を特別視するのは当然のことでしょう。この国で
この国で問題視されている瘴気は、薄いものであれば、
しかし、瘴気が
しかし、アイラはどんなに濃い瘴気だろうと完全に浄化する力を持っている。そんな特別な存在を誰も放っておくはずがない。それは第一王子であるレオンハルトも例外ではなく、近い将来、国の
ゲームのロゼリアがどう思っていたかは知らないが、今のロゼリアを
「そんな国の希望とも言える彼女に苦言を
ロゼリアはたっぷり間を
「公爵令嬢であるわたくしが、殿下の
ついでに飛ばした嫌みが
おまけにもう一つお
「わたくしが
レオンハルトが彼女に
(というか、
少なくとも今のロゼリアは
「何を言うか。彼女の強い浄化の力は聖竜の加護によるものではないかと言われている。これが
レオンハルトの言葉に合わせて、アイラは見せつけるように自分の手を
「まさか、聖竜姫……?」
誰かがそう口にし、小さなざわめきが大きなものに変わる。
今もなお
伝説の聖竜姫が再び現れたのかと会場は
(ゲーム通りに証拠を出してきたわね)
「彼女はこの国にとって、なくてはならない存在だ。本来であれば王妃となるお前が彼女に手を差し伸べ、手本となるべきであろう。たとえ、彼女が受けた嫌がらせに直接
「まあ! 殿下は想像力が大変豊かなようで
「殿下の
どうしても彼はロゼリアを悪者に仕立て上げたいらしい。持っていた
「……大して使えないくせに、舌ばかりよく回る女が……」
ぶちん、と頭の中で何かが切れる音がした。
「……はぁ?」
ロゼリアがそう口にした
「きゃあっ!」
「な、なんだ!?」
「
周囲の悲鳴にハッと我に返ったロゼリアが気を静めると、シャンデリアの揺れは
「また魔力の暴発か。昔からお前は魔力を暴走させる
ロゼリアとレオンハルトの婚約が成立した理由は、ロゼリアが強い魔力を持っていたからだ。しかし、強過ぎるが
「……それをご承知の上で婚約されたと記憶していますが?」
「それは幼い
「そ、それは……」
貴族にとって
(そりゃ、暴発なんて数えきれないくらいしてきたけど、器物破損はそんなに……いや、それなりにやってきたわね)
せめてもの救いは、
「機嫌次第で魔力を暴発させる王妃など言語道断だ。お前を王妃にしたら――備品の
「なっ、……何よそれ!? 他に言い方ってものがあるでしょ!?」
あまりの言い分に素で
「きゃあっ!」
アイラがレオンハルトに抱き着き、
「ハッ! お前の暴発は激しい怒りが原因で起きることが多い。つまり、先ほどの暴発は王族である私に敵意を向けたということになる。これは立派な反逆罪だな?」
「なっ!」
「この件については国王
「な、なっ…………!」
(なんでこうなるのよぉおおおおおおおおおおおおおおっ!)
こうしてロゼリアは、
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