第4話


 「夏希くん・・・その黙ってて・・・ごめんなさい」

 先生に報告してくれた山根さんだ。


「・・・ありがとう。先生に話をしてくれて嬉しかったよ」


「夏希くん・・・」


 山根が黙っていた理由は、山中に口封じをされていたからだ。


 単純に面白いから黙っとけと言うことで。


 本当はすぐに言おうと思ったが、事件直後は緊張で言えなかった。


 ハチ本体は回収出来ないところにあり、羽は私が持っておいた。


 

 夏希くんは昔、虐めから私を庇ってくれたことがあった。



 【あの根暗さ、言いたいことありそうな顔をしてるけど、言いたいことがあるなら直接言えって感じだよね】


 クラスの女子は、私が喋らないことをいいことに、私に聞こえてるところで悪口を言っていた。


【根暗で言えないのは、直接言えないアンタも同じじゃん】



 そう言ってくれた。


 それから一時期は虐めの対象が移った。それを分かった上で言ってくれたんだろう。



 「ごめんね、本当はもっと早く言えば良かったんだけど」


「いいよ、本当に報告してくれてありがとう」


「・・・っ!」

私は褒められて嬉しかったが、同時に一切表情の変わらない夏季くんが怖かった。

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