第3話

職員室を出るとすぐに姫宮さんが居た。

  

 「ごめんさない!!夏季くん!!」


「・・・?どうしたんですか?」


「私貴方に助けられたのに、なのに」


「いいですよ、俺のやり方が悪かったのは事実ですし、姫宮さんにしてはいけないことをしたのは事実です」


 「でも、私を助けてくたんだもん。触られることより命の方が大切だもん。だからありがとう」


「・・・そうですか、よかったです。」


「あの、何かお詫びとお礼をさせて」


「大丈夫です。」


「私のせいで、貴方を、貴方を傷つけてしまった。今更だけど、出来ることはさせて」


「大丈夫ですよ」


「お願い」


「大丈夫ですって」


 姫宮は頭を下げるが、


 「大丈夫だから」


 それに夏希は応えない。


 「だって」


 姫宮は基本的に他人を怖がったりしない。普段からどんな人にも優しい性格の人間だ。

 嫌われたこともほぼ無いため、あの時の出来事はショックで、恐怖を初めて感じた。


 だが、それを上回る恐怖


 「もう、何も必要ないですから」


「・・・」


 その絶望しきった顔に、これ以上の言葉は姫宮からは出なかった。



 そして、夏季が見えなくなると、一気に力が抜けるようにその場にしゃがんだ。


 

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