第2話

 「夏季、やり過ぎだぞ。」


「わざとじゃないです。姫宮さんを守ろうとして」


「仮にそうだとしても触ってしまった事実と、みんなが目撃した事実は変わらないだろ。」


「・・・そうですね。ごめんなさい。・・・本当に姫宮さんに悪いことをしました。」


「とりあえず、お前が謝る気持ちがあるなら、まぁ本人が許すか許さないかだな。許さない場合もあるから覚悟しとけよ。」


「はい。」


 「とりあえず、この後は親御さんに連絡するから。」


「わかりました。」


ーーーーーーー


 そして、俺の両親と姫宮さんの両親に連絡が入り、明日両親を含めて話をするらしい。


「先生・・・その大変申し訳ありませんでした。」


「・・・あぁ、とりあえず一緒に俺も家に向かうから」




 そして、先生は両親に事情を説明した。


 母親は泣きながら謝り、父親は俺を叩いた。


 本当に申し訳ないと思ってる。



 ーーーーーーーーーーーー


 妹と姉が帰ってきた。二人とも俺と同じ学校だからとっくに事情は知っているだろう。


 「ただいま、聞いたよ。」妹と

 

 「夏希、私も聞いたよ。」姉は俺を見下した顔で


  「最低」「アンタのせいで私まで評判が下がるじゃない」


と言った。


 両親も俺を責め続けた。


 一応、スズメバチから助けようとしたことは話をしたが、目撃者も居なければスズメバチが見つかった報告もない。


 正直、俺自身があの時本当に蜂が居たのか疑いたくなった。もしかする幻覚とか蚊だったのかも。


 

 俺はそれから、行動記録を付けるようにした。


 そして、次の日、俺はクラスメイトから、「痴漢」「犯罪者」

「捕まればいいのに」「近寄らないで」

と散々言われてしまった。


 でも仕方ない。


 ただ仲の良かった友達にも

 

 よく一緒に居た男友達から

 「一緒にいると思われたくないから」


 幼馴染で腐れ縁の女子にも

「いつかはすると思ってたよ」

 

 と、散々に言われた。けど事実だったから、受け止めるしかない。


 姫宮さんは今日は欠席している。


 放課後に姫宮さんを含めて、両親と話をした。


 俺は謝罪をしたが、許しては貰えなかった。


 でも仕方なかった。


 家に帰ると俺は妹と姉に散々罵倒された。


 そして、学校からは厳重注意扱いになったので、それからも登校した。


 俺は毎日のように罵倒され、靴を隠されて、物は隠されて、暴力は振られて、花瓶も置かれた。


 家では両親からはご飯が置いてあるだけで、舌打ちされるか急に蹴られるか以外に関わりはない。


 そんな毎日に心が折られた。

 

 もう人と話す気も、関わる気も起きなかった。


 いっそ自殺でもしようかと思ったが、それこそ本当に迷惑をかけるから辞めた。


ーーーーーーーーーーーーー

  

 ある日、俺は先生に職員室に呼ばれた。


 「夏希」


「・・・何でしょうか?」


「スズメバチの死体を見つけた。」


「・・・そうなんですね。」


「クラスでな、スズメバチの羽が見つかってな」


「はい」


 「スズメバチも羽が取れてたようでな、床に落ちてた」


「はい」


「リアクションが薄いな」


「そうですか?」


「いや、この話を聞いてみて、何も思わないのか」


「え、あ、でもそれだけじゃ何の証拠にならないじゃないですか、俺が仕込んだ可能性もありますし」


「実は目撃者が居てな、山根みたいだ。」


「そうなんですね。」


「でな、最後に、クラスでよく騒いでる山中がいるだろ。」


「はい、」


「そいつが事件の後に、まぁいいこれを見てくれ」


【本当にあったウケる。】

 短い動画だ。


「はぁ、」


「つまりだな、お前のわざとじゃないことが認められた。」


「・・・そうですか」


「はぁ??お前元気ないな。」


「・・・いやだって触ったことは変わらないですし」


「そうだが、」


「今回の件、大変ご迷惑をお掛けしました。」



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