Extra Phase 『祇園祭殺人事件』②

 捜査本部に向かうと、刑事さんは私を歓迎していた。どういう訳か「君が来てくれたらこの事件は解決に近づく」とのことだった。矢張り、警察による私の知名度は高いのだろうか。私はジャーナリストであって、職業探偵ではない。しかし、探偵として担ぎ出されている以上事件に関わらずにはいられない。仕方がないので、私は捜査本部で刑事さんの話を聞いていた。

 どうやら、殺人現場には「暗号のようなモノ」が残されていたらしい。暗号のようなモノには、「◯/33」という表記があった。ちなみに、蟷螂山の殺人には「1/33」、四条傘鉾の殺人には「2/33」という暗号が残されていた。これが本当ならば――「第六天魔王」は33人のも殺人を犯すつもりなのか。もはや殺人鬼の域を越えている。

「次に殺人が起こるとすれば、一体何を見立てるつもりなんだ?」

「それを私に聞くんですか?」

「そうだ。君ならこの殺人の謎が分かるはずだろう」

「うーん、今年の山鉾巡行の順番とか――そういうモノしか浮かばないですが」

「なるほど。確かに長刀鉾と船鉾を除いた今年の山鉾巡行の順番は殺人の順番と合致することになる。次に狙われるとすれば――月鉾か」

「そうですね。今年の祇園祭の山鉾巡行における月鉾の順番は4番目で間違いないです。しかし、月鉾に見立てて殺人を犯すとすれば――どうなるんでしょう?」

「確かに。それは私にも分からないな」

「考えられる手段としては――三日月に見立てた凶器で殺すとか、そんな感じでしょうかね? 仮に私が犯人ならそういう手口を使います。そういえば――山鉾巡行はいつでしたっけ?」

「今年は7月17日だ。ちなみに海の日に当たるので多数の来場者が見込まれる」

「今日は7月15日でしたね。――ちょっと、いいですか?」

「?」

「私にある『考え』があるんです」

「考え?」

「まあ、これは仮説に過ぎないんですけど、山鉾巡行で犯人を捕まえるんです」

「そんな大胆な事ができるのか!?」

「任せてください。私は探偵でありジャーナリストでもあるんですよ?」

「そ、そうか……」

 私の考えが正しければ、一連の殺人事件の犯人は恐らく私を憎む人間だろう。私を憎んでいる人間。それは――「彼」だ。

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