2
案の定、山鉾巡行はその時点で中断――というか、中止になった。当然、事件現場となった長刀鉾には青いビニールシートがかけられて、四条通一体に規制線が張られることになった。矢張り、「魔王」の殺害予告は本当だったのかな。眼鏡をかけたセンター分けのイケメンな刑事さんが、アタシに話しかける。なんか、若い頃の
「あの、少しよろしいでしょうか?」
「刑事さんですか? それなら話を聞いてもいいですけど……」
「この殺害予告状は本物なんですか?」
「はい、そうですけど……」
「どこで拾ったかとか、分かりますか?」
「善く覚えてます。郭巨山でちまきを買った時に貰った紙の中に混ざってたんです。なんというか、私に対して意図的に渡したとか――そんな気がしました。予告状に書かれた『魔王』は全国各地で事件を起こしていて、祇園さんも殺人事件を起こす場所として狙われたといったところでしょうか。ほら、最近『魔王』による犯行声明が相次いでいますし……」
「なるほど。参考になりました。ところで、あなたの名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「良いですよ。私の名前は宿南恵令奈と言います。刑事さんの方も名前を教えてもらえると嬉しいですね」
「えーっと、僕は――
刑事さんは飯室夏彦と名乗っていた。多分、信頼しても良さそうな人物なのは見た目からでも分かってた。でも、なんだか刑事さんはガタガタ震えてた。一体どうしたんだろう。
「ところで、刑事さん、なんで震えてるんですか?」
「あー、僕、捜査一課の刑事なんですけど人の血を見るのが苦手で……。ほら、真っ二つになった遺体から血が流れ出ていますし……」
「こんなコト言っちゃうのもどうかと思いますけど、そんなんで善く刑事になれましたね」
「それ、先輩の刑事さんにも度々言われています。それはともかく、恵令奈さんは事件の関係者ということで、一度署の方まで来てもらえないでしょうか?」
「そうですね。多分、私の口から話したほうが早い気がしますし」
そういうわけで、アタシは京都府警察の本部へと向かうことになった。多分、今まで「魔王」が起こした事件のこととか色々と聞かれるような気がするんだけど、この際全部説明したほうがいい気がする。それにしても、こんな日に殺人事件が起きるなんて刑事さんも災難だと思う。心中お察し申し上げたいレベルだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます