Phase 01 アタシは好きで鴨川にいる訳じゃない
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京都の水の大動脈は
ふと、スマホを見る。そういえば、今は
鴨川にいる人間を観察してみる。どこかの小説家マニュアルで「人間観察は大事だ」と書いてあったので、何らかの小説を書く上でのヒントにもなり得るのではないかと思ったのだ。大体がリア充の下世話な話だけど、中には子供が流行りのアニソンを歌いながら歩いている。堤防を見上げると、京都パープルバードFCのユニフォームを着た中学生がリフティングをしながら歩いている。多分、日本代表としても活躍している黒田選手のユニフォームだったと思う。そういえば、パープルバードから日本代表が選ばれるのって、20年以上前の大島選手以来だったっけ。まあ、大島選手が代表に選ばれたのはガッツ大阪への移籍が噂されていた時期だったけど。そして本当にガッツ大阪に移籍してしまった。
――ああ、リア充が多すぎる。かえって落ち着かないじゃないか。とりあえず、家に帰るか。
アタシの家があるのは、
家に戻って、ダイナブックに電源コンセントを接続する。充電が40パーセントを切っていたのだ。いくらノートパソコンのバッテリー寿命が伸びたとは言っても、矢張り充電が半分を切ってしまうと不安だ。スマホでさえ50パーセントを切るとヒヤヒヤしてしまう。まあ、常にフル充電を心がけることが大切なのだが。
冷蔵庫から、水出しした麦茶を取り出してそれをコップに淹れる。この時期は、1日で1リットル分飲んでしまう。それだけ、京都の夏は暑いのだ。豊岡も大概だったけど、矢張り夏の京都には敵わないだろう。アタシの小学生時代からの友達で商売敵でもある芦屋在住の絢奈ちゃんが羨ましいぜ。えっ、なんで絢奈ちゃんが商売敵かって? そりゃ、アタシも小説家だし。ペンネームはアタシの本名である「
それにしても、祇園祭か。疫病が蔓延する前に行ったきりだな。そもそも祇園祭自体が「疫病退散」を目的にしてんのに、疫病で中止になるって何かのギャグなんだろうか? それも2年連続。まあ、去年は天気が心配だったからKBS京都の中継とYouTubeの配信で見たのだけれど。――そうだ、今年は行くか。
今のままじゃ暑いから、とりあえず夕方になるまで待つ。それまでは、書きかけの小説でも書こう。でも、正直スランプ気味なのよね。なんていうか――アイデアが浮かばないのよね。多分、売れっ子である絢奈ちゃんは頭ん中に色々アイデアを貯めてるからああいう風に書けるんだろうけど、アタシはそういうコトが苦手だ。一度、絢奈ちゃんにアイデアを貯めるコツを聞いてみたいモノだ。絢奈ちゃんは神戸を舞台にした推理小説を多数書いてるんだけど、神戸よりネタに困らない京都市内で住んでんのにいい具合に小説が書けない。どうしたものかなぁ。アイデアを浮かべるためにアタシのお気に入りのアーティストであるDo As Infinityのアルバムでも聴こうと思ったけど、そんなコトしてたら夕方になるのを忘れてしまう。――とりあえず、FM802でも聴くか。
そうこうしているうちに、夕方になった。湿度はともかく、多少は気温が下がっただろう。部屋着からユニクロで買ったアニメキャラのTシャツに着替えて、スマホポーチを兼ねたサコッシュを持ち歩く。もちろん、ダイナブックは荷物になるから置いていく。そして、アパートの鍵をかけてから、アタシは外に出た。
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