第13話 おまけ(マネージャーになるために)

『紹介してほしいんだけど』


結木とのLINEに入力すると、1時間ほどでようやく既読のマークがついた。

そして結木が普段よくつかうスタンプで『?』が返ってきた。

忙しいときの結木の返信はいつもそうだ。きっと今も忙しいのだろう。


『テニス部のマネージャーになりたいんだけど』


(忙しいだろうからすぐには見なくとも明日には見ているだろう。)

そう思いスマホを置いて風呂場へ向かおうとした新海を着信音が呼び止めた。

結木の反応は驚くほど早かった。


ーはぁ!?なんで急に。


ーダメかな?


ー先輩にも誰か紹介するように言われてたし良いけど、理由をちゃんと言ったらな。


ー好きな人がいるから。


ー誰だよ!?


ーそれは秘密


ーなんだよ・・・ってか部活やってるだろ?うちの部忙しいから掛け持ち無理だぞ?


ー辞めたから


ーはぁ!?何考えてんだよ


ー何考えてんだろうね…。何も考えてないんじゃない?


ーったく。紹介してやっても良いけど好きな相手がいたとしても、それだけじゃうちのマネージャーは続かないと思うぞ?


ー聞いたよ。休みがないんでしょ?


ーあぁ、それに練習時間が長いから帰りも遅くなるし。やれるのか?


ーまぁなんとかなるよ。忙しいのも休みがないのも現状と変わらないし


ーったく、いつもやることが唐突なんだよ。


ー流石に急にじゃ難しいよね


ーいや?今ならマネ一人しかいないし大丈夫だと思うぞ?お前なら鉄二も押すだろうし


ーなんか轟くんには弓道なげだしたこと怒られそうだけどね


もう電話した方が早いんじゃないだろうかと思っていた頃、急に結木からの返信がこなくなった。

やはり忙しかったのだ。

忙しいころにこんな話をして流石に悪かったかなと新海は反省しつつスマホを防水加工して風呂場へ持ち込んだ。

だが返信はこない。

部屋でゴロゴロしながら待つもスマホは真っ暗なままで、それから30分ほどたってようやく返信が来た。


ー自分の決めたことだろうってさ。


ーえ!?轟くんにもう話したの?


ーあぁ。ついでにマネージャーの件も先輩に聞いといた。


ー本当!?もしかしてまだ部活だった??


時計の針はもうとっくに21時を指していたから、部活は当然終わっていると思ってLINEしたが噂以上にテニス部はハードらしい。


ー先輩も明日連れて来いって言ってたから、朝練からこれるか?


ー何時?


ー7時


ーOK、ありがとう


スタンプで返信が来たからこれで終了だ。

行動力のある幼馴染で感謝するべきなのか。気持ちが固まる前に決まってしまって焦るべきなのか。

今となってはどちらでもいい。

部屋の窓を開けベランダにでて澄んだ空気を肺いっぱいに取り込んだ。

まずは一歩。

予想以上に早かった一歩だが、うだうだ悩むくらいなら早い結論の方がありがたい。

(明日頑張らなきゃ!)

新海は笑いながら天を仰いだ。

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