EP6

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……。


…………。


「ヒグッ!?」


 仰向けに寝ていた女の子は、手足をびくっと動かし、赤子戻りと言うのか、赤ちゃんの様にまるまる恰好で目覚めた。


―――おはよう。やぁっと起きたね。


「えっ、えっ……。

 僕、寝ちゃってた!?」


 彼女は、気が動転しながら辺りを見渡す。


―――うん、がっつり眠ってたよ。


「今……、何時!?」


―――もう、3時だよ。


 女の子は壁にかかる時計を見る。

それも幼い時に親に買ってもらったウルトラマンの壁掛け時計だ。


「ギャ、ギャース!!

 もう3時だよぉ~……。」


―――凄い。ギャースってもうそれ怪獣だよ。ご主人様が怪獣になってどうするの。


「まっ、まってまって待ってぇ~……。

 僕のラーメンは……?」


 女の子は、机を上を見る。

すると、そこには無残な姿になったカップラーメンが……。

 スープを吸い過ぎて、でろでろ膨張し、少し開いた蓋から、まるで得体の知れないミュータントの様になった、黄色の様な肌色の物体が覗いていた。


―――あーあ、無残だね。流石にそれは食べられないよ……。


「お腹空いたのに……。

 ……ゴクッ。」

女の子は生唾を飲んで何かを決意する。


―――ちょっと……、まさかご主人様?


 二本の箸は机に散乱しており、女の子は”パシッ”と掴んだ。


「ゴクッ……。

 ちょっと食べみる……。もしかしたらお汁を一杯吸って美味しいかも知れない……。」


   ”ピリッ”


 女の子はカップの蓋を全開にする。

すると蓋により閉じ込められていた怪獣達が一斉に溢れ出し、でろでろと机の上にまき散らす様に零れた。


―――あ~あぁ、中そんな事になってんだね。


「うぇ~えぇ……。

 こんなになってるの?」


 彼女は箸を使って、そのブクブクに膨れたミュータントを掬いあげてみる。

それは箸に引き上げられて、ほろほろと解け、”ベチャ”っと落下し、箸の上には小さなミュータントの塊が乗っていた。


「おっ、美味しいかも知れない……。」

女の子は、覚悟を決めその物体を口の中に放り込んでみる。


   ”パクッ”


―――おお、いったねぇ。


   ”もちゃもちゃ”


―――どうなの?実は美味しかったり?


「口の中で麺がねちょねちょ暴れて、塩味と油が広がって、舌をヌメヌメにコーティングして気持ち悪い……。

 うっ、うえぇええ~……。まっ不味いぃ~!」


―――まぁ……そうだろうね。


「えーん!

 また食べられなかったぁ~。」

おいおいと泣き出す女の子。


 彼女は、同じようにカップ麺を作り、寝落ちしてしまい食べれなかったという経験をもう5回ほどしている。


―――いつも同じことの繰り返しだからね。……逆に凄いと思うよ。


「はぁ。

 しょうがない。」


   ”ドタドタドタ”


 諦めた彼女は台所にある、冷蔵庫へ向かう。


   ”プチプチプチ”


 歩きながらブラウスのボタンを外して行く。


   ”ガチャ”


 冷蔵庫を開け、栄養補給飲用ゼリーを取り出す。


   ”バサッ”  ”ガチッ”


 彼女はブラウスを放り投げ、ゼリーの蓋を開けた。

その姿は、ブラジャーとショーツ一丁だ。


―――もう、はしたない……。


   ”ぎゅうぅう!” ”ゴクゴクッ”


 彼女は腰に手を当て一気に飲み干す。


―――毎回そうなるよね。それ美味しいし栄養あるからね……。


「良し、僕はお風呂に入るぞ……。

 早く寝てしまうぅ……。」


   ”ドタドタドタ”


 とお風呂場まで駆けて行く。


   ”ガチャ”


 お風呂場を開ける音。


   ”キュウッ”  ”ジャー”


 お湯を捻って女の子は頭からかぶる。


「うぁあっ!

 まだ水だった!!

 冷たいぃ……、ううぅ。」


―――大丈夫?風邪ひかないでね。


   ”キュッ”


 シャワーを捻って止める。


 彼女は急いで頭や身体を洗って、シャワーのみでお風呂を出た。


   ”シャコシャコ”


 裸のままで歯磨きを始めた。


   ”ガラガラペッ”


「よし、歯磨き完了ぅ……。

 ぬっぬれてるから履きにくいぃ……。

彼女はショーツだけを履きリビングに戻って来る。


―――1番はしたないよそれは……。


 彼女は散らばっていたパジャマを見つけ、掴んで着替えた。


「よし……。

 もう寝る……。

 うーたんお休み……。」


―――おやすみ。目覚ましかけ忘れないでね。


 女の子はタイマーをセットし、掛布団を被り電気を消して眠りについた。


…………。


……。


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