EP5
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……。
…………。
泣きながら彼女は日々を想う。
3分間すらヒーローになる事が出来ない自分。
夢も忘れて、忙しさに殺されて、同じような毎日。
何処に行く事も出来ず誰にもなれず。
それでも……。
心の奥底には……、忘れられない憧れがある。
胸に宿した夢の光は、今はただ、鳴ることなく彼女を待ち続けている。
"ピコン""ピコン"
カラータイマー型の計数機が鳴り始めた。
後1分すれば、3分が経ち、カップラーメンが完成する。
幼い頃に思い描いた夢。
それは彼女の胸に灯った、愛しい光。
今もずっと、青く輝き出すのを待ち望んでいる。
…………。
……。
"デュワ!!"
カラータイマーが3分間を告げる音を鳴らす。
"クーッ……"
泣いて泣いて、泣き疲れた彼女は小さな寝息を立てている。
―――あ〜あ、やっぱり寝ちゃったね……。
時刻は12時を指していた。
掛け布団の上で大の字になって眠る女の子。
夢の中では願い恋焦がれるヒーローになれているのであろうか……。
―――ほら、起きて!ご主人様!!カップラーメンが伸びちゃうよ!!
"うにゃ……むにゃ……"
女の子は全く起きる気配は無い。
―――ねー、そうやってどうせ寝てしまうんだから。せめてお風呂は先に入った方が良いって言ったのに……。
「……うーたん、あの怪獣〜……強いよ……。
2人の合体わざだぁ〜……。」
―――凄い寝言だね。
「……ダブルスペシウムこうせ〜……クーッ……。」
―――なにそれ……。凄そう。
女の子は全く起きる気配は無い。
―――もう、しょうがないね。今はゆっくりお休み。
日々の中忙殺された、女の子の小さな夢。
それは燻り、燃え続けて、彼女の胸をチリチリ焦がし続ける。
―――僕はさ。ご主人様のこといつまでも見守っているからね。
女の子は、夢の世界で、ヒーローになる。
誰かの為にその小さな身体で、強敵に挑む。
それが、心がドキドキワクワク高鳴る彼女の願い。
…………。
……。
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