EP4
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……。
…………。
「きっ、来た来た、来たぁ~……!」
女の子は目をキラキラさせている。
待ち侘びていた幸福の音だった。
”ドタドタドタドタ”
―――こら。そんなに慌てたら転ぶよ。
”べちゃっ”
女の子は前のめりに盛大に、台所のフローリング突っ伏す。
―――ほら。言わんこっちゃない。
「痛てて。でもやっとお湯が出来た……。
命のお湯が……!?」
―――そんな大袈裟なものじゃないよ。ただのお湯。
「あっ、アチアチうちに注がなきゃ……。」
電気ケトルを掴んで、女の子は、カップ麺の元へ急ぐ。
今度倒れたら本当に危ない。細心の注意を払ってリビングに戻る
「あぁ、剥いとけばよかった……。」
ブーターブッタのカップラーメンはびっしりと包装され密封されていた。
”カリカリカリ……、ピリッ、ムシ~~~”
砂漠で水を得たかの様な慌てぶりで、ムシムシと包装ビニールを剥がしていく。
―――もう。慌てないでね。火傷はしちゃだめだよ。
「フィルム取れた。
このシールは大事に取っておくぅ……。」
彼女は底に付いていたシールをおでこに貼った。
―――なんでおでこ?
「いっ、行くぞぅ……。
うーたんちゃんと見ててね。」
―――もう。いちいち大袈裟なんだよ。気をつけて入れてね。
"ゴポゴポゴポゴポ"
"ジュワ〜"
―――この熱湯を乾麺に入れる音、なんとも言えない気持ち良さがあるよね。
"あち!"
女の子は古典的に熱湯が触れた指で耳たぶを掴む。
―――ほら!言わんこっちゃない!
「あちちっ……。
でも……、耳たぶひんやりして気持ちいい……。」
―――はいはい。大事にならなくて良かったですね!
「……ちょっとお湯は少なめ……。
うぃー。なんとか入れれた。
後は3分待つだけだ……!!」
目をキラキラさせて言う女の子。
―――タイマー忘れずにね。
"キリキリ"
女の子はゼンマイを巻く。
それは彼女が小さい時から大事にしてる置き型の計時機で、ウルトラマンのカラータイマーの形をしている。
ゼンマイを巻いて時間を入力。
するとカウントが始まり、残り1分になると色が赤くなり、残り10秒となると、"ピコン" "ピコン"と1秒ごとに音が鳴る。
0秒になると、"デュワッ"と一言声がして時間を知らせる。
"ボスン"
ベッドに仰向けで倒れ込む
「3分かぁ……。」
女の子は呟いた。
そして、枕もとのぬいぐるみを抱き寄せる。
「3分ってさぁ……。
思ってるよりも長いよねぇ。
うーたんはさぁ……。
すごいよぉ。」
―――なんだよ、急に。
「3分の間ずっと強くて怖い怪獣と闘うんだよ。
時には傷付いて怪我したりしてさ……。
誰かを助けるためにさぁ……。」
―――それが、使命だったからね。
「僕もさぁ……。
3分間だけで良いんだぁ……。
誰かの為になりたいなぁ……。
必要とされたいんだよぉ。」
―――僕はご主人様の事、とっても必要に思っているよ。
「ふぐぅ……。
毎日、毎日さぁ〜。
僕は何してるんだろぅ。」
女の子は仰向けのまま手で顔を覆い、"エンエン"と咽び泣き始めた。
―――あぁ、また。今日はいつになく感傷的だね。大丈夫だよ。僕がついてるよ。
…………。
……。
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