EP3
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……。
…………。
"プクプク"
耳をすませば、台所から聞こえる電気ケトルの音。
底から少し気泡が上がって来ているのだろう。
「そうだ……。
今日のカップラーメン選ばなきゃ。」
ベッドに突っ伏していた女の子はむくっと立ち上がった。
―――またカップ麺ばっかり……。
"テクテクテクテク"
「ふっふーん♪
今日はどれにしようかなぁ。」
今度はうーたんを置いて1人で台所へ再び向かう。
―――もう。僕の目線の低さからならパンツまる見えだよ。
「うっ、うぃ〜っ……うーん……!おわぁっ!!」
"ガコン"
―――あぁ。その棚、建付け悪いから……。大丈夫?
「うぅ~。毎回こうなる……。」
女の子は棚の扉を力いっぱい引っ張り後ろにゴロゴロと転がり、ベッドから見える位置まで……。
仰向けのカエルみたいな格好になっている。
「いって、ててて……。
はぁ……、全くもう……。」
女の子はゆっくり身体を起こし、また先程の棚へ向かう。
「どれにしようかなぁ……。
今日は優しい甘い味がいいなぁ……。
コーンがたっぷり入っててー……。
バターなんかも乗せちゃったりしてさぁ……。」
「あとあと、バター入れるなら塩ラーメンもあり……。
魚介の旨みがたっぷり入ったやつでさぁ。
それがバターと絡まったら……。
はっ!?……そっちにコーン入れるのもありぃー……。」
―――もう。イメージはいいから、早く選びなよ。
"ジュルッ"
「よだれ出ちゃった……。
よしこれにするぅー。
ブータブッタの味噌ラーメン!
そしてシリーズはブーターブッタだ!
……、3D麺がガッチリしてて美味しいんだよねぇ……。何よりいっぱい入ってるぅ!」
女の子は取ったどー!みたいな感じでカップ麺を掲げた。
―――はいはい。じゃあ早くこっち戻っておいで。
"トタトタトタ"
「ふぃ〜。
うーたん決まったよぉ。
今日は味噌ラーメンだぁ……。」
ドヤ顔でほっぺの横にカップ麺を付けて見せびらかす女の子。
―――そのシリーズ美味しいもんね。
「ふんふー♩
あとはお湯が沸くのを待つだけだ……。」
"バタバタバタ"
―――ほら、足バタバタして、楽しみを表現してないでさぁ……。お風呂。入ってきなよ。
女の子はぬいぐるみを再び両手で抱きかかえて、耳元で囁く。
「うーたんは何ラーメンが好きなの……?
醤油?塩?それともトン・コ・ツ?」
―――何その、お風呂にする?ご飯する?それともあ・た・し?みたいなやつ。お風呂だよ。お風呂に入りなよ。
「まだかな♪まだかな~……♪」
”ぐ~ぅうう”
「はっ!」
女の子は恥ずかしそうに顔を赤くして、辺りを見回す。
そして、うーたんを掴んで顔の正面に持ってくる。
「聞いた……?」
―――聞いたよ。お腹の音。それはもう、今日もお仕事頑張って来たご主人様へのファンファーレだよ。
「恥ずかしい……。
学校とかさ、仕事中とかさ、お腹鳴るの本当に恥ずかしいんだよね……。」
何かトラウマがあるのか顔ちょっと曇り顔で俯く。
「なんかさぁ、お腹鳴るのって、カラータイマーみたいだよね。
うーたんの胸についてるやつ。
地球で戦える制限時間……。
あれって3分間しか戦えないんだよねぇ……。」
―――そうだね。カラータイマー。青から、残り時間が少なくなると赤に変わるんだよ。
「あぁ、本当にお腹空いた。
僕のカラータイマーがもう、ピコン!ピコン!って点滅してるよぉ~……。
……命の、光が赤になってる~……、うっ……。」
―――大袈裟だなぁ……。でもそろそろ……。
"ゴゴゴゴゴ"
―――ほらケトルが騒がしくなって来たよ。
"カチッ"
「うわっ!!
お湯が沸いたぞぉ〜……。」
―――お。早く取りに行っといで。
…………。
……。
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