溢れる気持ち
神永 遙麦
《理想と現実》
大学に入ったら恋をする。
そう決めてた。
中高の6年間は不登校で引きこもってた。っつか内申点無くて高校は入れなかった。ま、そこは置いといて。
揺れる黒髪。つぶらな瞳。水を含んだ赤い唇
そこらのキャピキャピしたバイトをバックレるタイプの女子じゃなくて、誠実でぼくだけを見てくれる子。メイクも薄めがすっぴんがいい。
デートもショッピングだとか遊園地だとか映画だとかそんなくだらないことじゃなくて、ただ隣にいる、それだけで幸せだと感じる子。構ってちゃんはごめんだ、面倒くさい。
どこまでもひたむきで、可愛らしくて、素直で健気で、ぼくだけを見てくれる子。
バスから降りて正門をくぐると、そこに彼女はいる。
ただ彼女だということは気付かないんだ。彼女はまだ田舎から出てきたばかりで垢抜けていないから。
ただ彼女は気付いていた。初めて会った時から、初めてぼくと目が会った時から。彼女はただ、ぼくに恋をする。
でもぼくは気付かないんだ。
彼女はぼくに振り向かれたい。そう願ってただお洒落を身に着けようとする。ぼくに振り向かれたいと願って、ぼくの好みをどうにか知ろうとする。いいや、違う。知ろうとしなくても、彼女はもともとぼくの好みだ。だのにぼくは気付かない。
そしてある日彼女は着飾るんだ。薄いメイクに清楚なワンピースを着て。唇には薄いピンク色の口紅を引いて。
彼女はぼくを…屋上はないか。どこかの木の下に呼び出す。
彼女は唇を震わせて「あなたが好き」そう言う。
ぼくはただ驚く。けど彼女と付き合ってみることにする。
彼女にとってデートは高級なフレンチなんかよりぼくと食べるラーメンの方がいいんだ。ぼくがどんな人間だったとしても、ただぼくだけを愛するんだ。
そして、いつかぼくもそんな彼女を愛する。
もちろん、彼女はぼくの親とも仲がいいんだ。ぼくの親も、ぼくが結婚するなら彼女だと願うんだ。
彼女はどんなことにも労を惜しまない子なんだ。
そして、どんなぼくでも愛してくれる子なんだ。例えぼくがどんな失敗をしたとしても。
溢れる気持ち 神永 遙麦 @hosanna_7
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