第16話 本来の自分と生前の自分

俺はひおり。

昨年5月にこの世を去った。

その去った月ですら、もう今の俺の記憶からは抜け落ちている。


ユリナちゃんの記憶から5月と言うのがあるから、わかるだけ。


でも、この世を去ったばかりの頃は、少しは記憶している。

いきなり外人が俺を迎えに来てびっくりした事とか。


今では、生前の記憶なんてほとんど無い。

でも・・・必要な記憶だけがあるらしく。


生前、友人達と事業を起こし、一気に業績は伸びた。

そして・・潰れた。


お金持ちだった自分。


感覚も生前の感覚があったり。


だから。

最近までユリナちゃんに対して、

生前の自分の感覚のまま接していたんだ。


俺の今生と言うものと比べて、

真逆なユリナちゃんの今生。


生前の俺の生活水準と比べるとびっくりするくらいなカルチャーショック。


「生前に出逢えていたら、、

あんな事も、こんな事もして

助けられるのに!!」


「なんで、、どんな形でもいいから、、出逢えなかったんだろう。」


そんな事を考えてばかりだった。


ユリナちゃんが以前に書いていた頃に出逢ったゆうさん。

彼が羨ましい。


「あんな形でも出会ってたら、助けられるのに。」

とかね。そんな事をやたらと考えてたよ。


俺は、自分がお金が沢山あった感覚から

そのお金を使い、

あんな事もこんな事も。。

なんて考えたんだ。


今では、その生前の

『自分にはお金が沢山あった』

と言う感覚を神々様が残した理由がよくわかる。


俺の心の間違いを正す為に、わざと残したんだと。



ユリナちゃんが百貨店に販売に行くのに一緒について行く俺は、

百貨店の品物を見ては、

「買ってあげたいな。」

とか、ユリナちゃんに向けて言う。


その度に、彼女はただ、

「ありがとう。」


そう言うだけだった。



後々に気付かされた俺。


ユリナちゃんは、『俺がしてあげたい』と言う事は、別に望んではいない事。


俺は自分の目線からしか見えてなくて、

彼女が不憫だったんだ。


不幸に見えていたのかもしれない。


でも、彼女は、全く不幸ではなくて、

自分はただ、大変な今生だと考えている。


そして、物欲なんてまるでなくて。

あれが欲しい、これが欲しいなんて

まるでない。


まるでない人に向けて、俺が勝手に

不憫に思い、あれも、これもあげたい。


なんて独りよがりで、自己満足なんだろうな。


きっと、その間違いに神々様は

「早く、気づけよ!」

とする為に、生前の感覚を残したままだったんだな。


これって、生前、俺は他の人に向けても同じだったのかもしれない。


子供の事や、家族の事、仕事や、職場の人。


自分側からしか見れず、相手側からの事が抜けていたのかも。


ユリナちゃんは、自分に寄り添い、

自分を理解してくれる、

周りの人や、神々様がいるだけで

満足している。


そして、籠の中にある、ちょっとした

おやつ。


これだけで彼女は幸せなんだと。


自分とはかけ離れた感覚の彼女から、

教えられた事。


お金じゃなく、物じゃなく、


温もりなんだと・・・。。。

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