睡眠時貰い事故症候群
基本的に、お気楽能天気な無病息災である私も、五年から十年スパンでたまに撹乱し高熱を出して寝込むことがある。
夏を前にして既にバテてしまっていたある夜、熟睡できずに朦朧としながらうつらうつらしていると、室内に子どもの明るく楽しそうな声が反響し始めた。
おそらく小学校低学年以下の男の子と女の子と思しき変声期前の子ども特有のよく響く高い声。
窓を開けていたので外の声が室内に反響していただけかもしれないが、いずれにせよ夜間。いくら治安の良い日本とはいえ、子どもたちだけが外ではしゃいでいるのはさすがに不用心だ。
「ねえ、ほら、早く早く!」
「えー、待ってー」
空耳だろうが、そんな会話が妙に鮮明に聞こえてくる。
そして、廊下の向こうから響いてくるパタパタと元気に駆け回る二人分の足音。
なぜ、廊下……と、ぼんやり思っている間に、足音が随分と近くに聞こえる。それこそ室内を走り回っているかのようだ。
「ほら、急いで!」
寝込んでいる頭のすぐ横で女の子の声がしたと思った直後、脳天を直撃した柔らかいけど、そこそこ重量感のある衝撃。
例えるなら、ぶんぶん振り回していた給食袋が脳天にエアヒットした、みたいな重量感。
他人を叩くふりをする時、頭に片手を添えてその上からパシンと叩くと衝撃だけが手のひらを通して頭蓋骨に響く、あの感じのちょっとヘビー級なやつ。
「うっ……」
と、思わず呻いてしまう程度にはダメージを喰らう。
直後、シンと静まり返った室内に逃げるように響いた足音が、廊下とは反対側の壁を突き抜けていった。
次に遭遇した時には、「ごめんなさいは?」と説教してやりたい。
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