寝耳に念仏

よもすがら 連綿とく 幾重いくえもの 練れた声だが 何の経やら



 人間、疲労が極限に達すると誰しも幻聴に見舞われることがあるという。


 試験明け、ようやくぐっすり眠れると思っていたとある夜半、気が付くと一晩中ずーっと周囲に朗々と練れたおじさんの多重唱が超低周波の如く響いてきた。


 とりあえず読経のような気もするが、実際のところ、おじさん方の重低音ボイスが何やらむにゃむにゃ聞こえるばかりで、肝心の内容の判別が全くつかない。

 何を言っているか皆目分からないけど眠れないのは確かなので、妙なテンションで冴えた私の脳裏に、ピーンとアホな考えが閃いた。


(読経かどうか分からないなら、一本くらいお経覚えたらイイんじゃない !? )


 そして現在。

 一、二年に一回のペースで般若心経を写経しては結縁者となっている奈良の薬師寺(法相宗大本山)に納経奉るのが趣味となっている。そんな縁もある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る