第44話

 地上へ出て来たら最初に行くのは焼肉屋のおやじの所だ。


「今日は何の肉を持って来た・・・もうオークメイジの肉は無いのか」


「カウの肉です」


「カウの肉か・・、オークメイジの肉は無いのか」とまたオークメイジの肉を希望しています。


「カウの肉だけです、私達のオーク戦士の肉は在るんですよね」


「それは・・・有るから安心しろ」 預けているオーク戦士の肉と持って来たカウの肉を食べていつもの宿舎に帰る。


 男たちだけに成った所で「いつもの所に行って来る」と俺が言うとバースが「俺もいつもの所に行って来る」といって別れた。


「あいつのいつもの所知っている奴は居るのか」と残りの二人に聞いたが知らなかった、バースは何処へ行った。


「・・・・・・」とゴンが言っています。


 ゴンちゃん情報は昼間一緒に帰って来た男の人達と何か話していたという事です。


 俺が一番前で戦っている時に男も女もおしゃべりタイムか・・・。


 バースも地下十階まで行ったのだから、ここでは十分大人として扱われる資格が有る、前回襲われた事が有るので少し心配たが大丈夫だろう。


 そんな事を考えながらサリバンさんの所に来た。


「ここに置いて行きますね」不在かな・・・。


「もう帰るのか」と後ろから声が聞こえて来た。


「びっくりした、不在だと思いました」


「いつもは出かけてる時間だが飯を食いに行っていた、調子はどうだ」


「調子ですか、悪くも良くも有りません」


「何か精神的な事は大丈夫か」


「あー、前回の件ですね、意外となんともないです」


「そうなのか、お前だと辛いと思っていたが本当に大丈夫が、何時もと違う事は無いか」


「心配してくれて申し訳ありません、行った事を考えると精神的には滅入りますがあの時はそれが必要な事だったと自覚していますから大丈夫です、同じ場面に成っても同じ事は出来ます、本音は同じような場面には出会いたくないですがそれでも避けられない時は仕方ないです」


「何かいい顔になったな、男になったと言うかそんな感じがする」


「男になったですか」


「そのうち自覚するだろうよ」といってニヤニヤしている。


「なんですか、気持ち悪い」


「はっはっは、何でもないよ」


「地下十階に行ったら判るという意味は解りました、地上へ来るとまた変な感じですね」


「そうだが、そればかりは慣れるしかないからな、地下十階の説明をしようとすると抽象的な言葉しか出て来ないだろう」


「そうなんです、なんでてすかね」


「ダンジョンが何を考えているかは判らんから俺は考えるのを止めた」


「サリバンさんでもですか」


「攻略を諦めた訳ではないが今は地上に居て色々しないと駄目だからそうしている、お前達も行き詰ったら地上で静養する事を俺は勧めるが、地下十階へ行くような連中は俺の言う事を聞かないからな」


「良く考えておきます」


「お前達に生き詰まりは無関係かも知れないが心のどこかに留めておいてくれ」



 カウの肉も食堂へオーク肉の代わりに少し卸しておく事を伝えてサリバンさんの所を出た。


 サリバンさんの所を出たら、誰か後を付けて来ているが一定の距離から近づかない、夜でもこの建物の中で襲ってくることは無いだろう。


 次の日の朝、バースが帰って来ていない事が判明した・・・。


「昨日、サリバンさんの所から帰る時に誰かに後を付けられていた」


「そうなんですか、どうします」


「サリバンさんの所に相談に行くしかないよな」



 サリバンさんの所に相談に来たが話を聞いてまたニヤニヤ笑っている。


「真剣に聞いてますか、バースが昨晩帰って来なかったんです」


「何か言ってなかったか」


「いつもの所に行くって言ってましたがいつもの所が判りません」


「そうか、それは初めての所かも知れない」


「行った場所がサリバンさんは判っているのですか」


「知ってはいるぞ、若い時は行ったことも有る」


「十時頃までには帰ってくると思うぞ」


「そうなんですか」


「お前も男なんだから判らないのか」


「男なら判るのですか」


「お前はまだお子様だったか」といって笑い出した。


 昨日は男らしくなったと言われ、今日はお子様と言われニヤニヤされたり、笑われたりしたが何の事だ。


 大丈夫だからと言われて部屋に戻ったらバースが帰って来た。


「バース無断で外泊は駄目だぞ、心配した」


「眠い、お姉さんが帰してくれなかった・・・・」とすこしげっそりした顔で何か言って部屋に行こうとした。


「バース説明すれ」


「眠いから後で、疲れた」


「バースは無事だったがどうなっているのだ」


「アランは本当に判らないの」とレイが聞いて来た。


「何の事ですか」


「お姉さんが一晩、返してくれなかった、一晩中、起きていた、それも女の人とそして疲れたと言って寝たんですよ」


「認めたくないが、男になったのか、バースは無理だろう、地下七階の事件が有っただろう」


「それは男の人だからですよね、女の人とは別だと思いますよ」


「そうなのかーーー、バースよ遠い所へ一人で行ってしまった」


「一人では無いですけどね」


「えーーーー、レイお前えもか」


「私は明日は十階で知り合ったお姉様とデートする予定ですよ」


「いつの間にそんなことを約束しているんだ」


「それは物資の調達とか融通の時など色々な機会にしてますよ」


「そうなのか」


「それより、あなたはサンドラとはどうなのですか」


「サンドラとは何も無いぞ」


「あなたはもう少しサンドラの気持ちについて考えた方が良いですよ」


「サンドラの気持ちって何だ」


「サンドラがあなたが人を殺した時に止めに行きましたよね」


「止めに来たな」


「どんな気持ちで止めに行ったのか考えたんですか」


「必要無い殺しをさせないためだろう」


「それも有りますが、それでもあなたに殺されるかも知れないのに止めに行ったんですよ」


「そうだよな・・・」


 いつも、好きです光線を出している、サンドラの事を考えていないとは思いませんでした・・・、これは頭が痛い大問題ですね、私はため息しか出ません、この案件は明日お姉様に相談しましょう。


 バースを残して予定通り資料室へ来た、ここに在る地下十階以降の資料は地下十階に行ってないと何が書いてあるのか理解できない、ほんと不思議だ。


 資料室へ行く前にサンドラと待ち合わせをしている、何時もはアニスも付いて来るが今日は居ない。


「アニスはどうした」


「会って最初の言葉がアニスの事ですか」


「いつも一緒なのに居ないのは不自然だろう」


「そうですか、今日は都合が悪いと言ってましたよ」


「そうか、では行くか・・」なんだかサンドラはご機嫌だな。


 地下十階の攻略は最近みんなで戦っているので問題なくなっている、オーガキングの剣を見つけたから、次はジャイアントカウがホーンカウの剣を探しながらカウ討伐で行くか、数の多いカウの剣を先に見つけてから他のカウに行くかだな。


 それよりも地下十一階の砂漠地帯が問題だ、暑いのと方向が判らなくなる、それと砂特有の魔物が多くこちらは足場の悪い砂地で戦う事になる。


 色々調べたが砂漠は大変そうだ、なるべく戦わないで次の階へ行くという選択肢も有るが地下十階の攻略よりも地下十一階の攻略を先に始めるべきか、何時もの入口近くで剣の試練をして十階のカウでレベル上げをする、それならば十階のカウの剣が先か。


 考えは出るが頭の中でぐるぐる回って結論が出ない。


 お昼時間になったのでサンドラと近くの食堂へ行く、いつも地上に帰って来ても肉ばかり食べている。


 ここの店にはグラタンがある、ちょっとお高めの店だ。


「このグラタンって、カウの乳で出来ているって聞いたがカウを倒してもドロップしないですよね」


「私の聞いた話だとドロップ品の1/10が乳でもう1/10がチーズでその他は偶にドロップする感じですね」


「肉八乳一チーズ一ですか」


「そうですがドロップ率が30%なので三十頭に一個の割合位です」


「それは知りませんでした、でも俺達60頭近く倒していると思うぞ」


「あくまでもドロップ率ですから」


「サンドラさんが一緒でもですか」


「それは言わないの」とやんわり言われた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る