第42話

 雑貨屋で地下七階と地下十階に降ろす荷物を受け取った、地下十階に行ったら誰に渡せば良いか聞いても「行ったら判るから大丈夫だ」と言われた。


「判らなかったら持って帰って来ても良いから」とおやじがニヤニヤしながら何か楽しんでいる様な態度だった。 


 地下十階は俺たちは初めてでもアニスとサンドラは行ったことが有るはずなので聞いてもよく覚えていないとしか回答しない。


 何か変だよなみんな、地下十階に行ったことのある人に聞いても、みんな揃って「よく覚えていない」か「行ったら判る」しか答えない、どうなっているんだ。


 オーガキングとうまく戦いながら地下十階への階段まで移動して来た、ここを降りると地下十階だ。


 地下十階についての情報も肉屋のおやじが言った「肉の階」「カウが居る」「オーガキングより強い、ジャイアントカウが居る」以外の情報はキャンプ場があるという位で他はわからない。


 地下十階は見渡す限りの草原で町も見える、あれは塀の有る町だよな、ここにもオーガの砦が有るのか?塀の所に門もあるがオーガの姿は見えない、塀の上には人が居る様に見えるが魔物なのか?


 地下十階にも入口近くにキャンプ場があると聞いていたが何処にもない、あんな近くにオーガの砦が有ったらこの辺でキャンプは難しいだろう、俺なら絶対無理だ。


 男達が立ち止まってたら女子達は砦の方へ歩いて行った。


「ちょっと止まってください」


「どうしたの、町へは行かないの」


「あの町はオーガの砦では無いんですか」


「何を言っているのか判らないが、あそこがキャンプ地です」


「ここの事はよく覚えていないって言ってましたよね」


「そうなんですが、この階に着いたらすべて思い出しました」


「二人ともそうなんですか」


「はい」


「どういう事ですか、あの町の管理者に説明を聞けばわかります」


「あの町を管理している人がいるのですね」


 町に歩いて行くとやはり塀の上には人が居て見張りをしていた。


 俺たちに気が付いて門の横にある小さな入口を開けてくれた、この門は何のために有るんだ。


 門から入るとすぐに地下十階についての説明を白い部屋で受けた、何も無い部屋で勝手に頭の中に声が聞こえて来る。


 今までの階はここ以降へ進むためのチュートリアルでここからがこのダンジョンの本番になる。


 ここからは罠や魔物の連携プレーも出て来るが階層×五以上のレベルが有れば工夫次第で魔物は倒せる事。


 地下十階以下の情報はここに到達していない者には話せなくなり、書いてある情報も理解できない事が判った。


 今は、魔物の階は地下20階まで有り、年数が経つほど次の階が増える事。


 ダンジョンは最下層に有る、ダンジョンコアを破壊するか外へ持ち出せばダンジョンが劣化して消え去る事。


 などを聞かされた、あまり関係ない話もあったのですべて覚えている訳ではない。


 部屋を出て門の内側に入った、サンドラとアニスからは「話は聞いたの?」と聞かれた。


 アニス達からは一緒に門から入って出て来ただけの様に見えるらしい、アニス達も初めての時は同じことを先輩達から聞かれた。


「管理者の説明はこれだけですかね」


「そうみたいですよ」

 

「サリバンさんから深淵のドレークさんの所へ行って挨拶すれと言われているのでどこに居るかと、雑貨屋のおやじからの荷物の配達先が判らないかな」


「雑貨屋さんはあそこですね」と指を刺された。


「あすこに支店が有る、看板に何でも屋支店って書いてある」


 ここまで来れる探索者に少しづつ物資を運んでもらっている、そのため、雑貨屋での買い物に優待があるらしい、ただし自分で運んだものばかり買うと優待が受けられない、価格も運搬費もかかっているので割高になる。


 個人用に持ち込んだ、消費期限の長い物は帰る時に残りを売って帰る事も出来る。


 俺たちは雑貨屋のおやじに運搬費を貰っているが優待の話は聞かなかった、地上のおやじはここの優待の話も出来ないのか?そんな事はないよな、黙っていただけか。


 雑貨屋に荷物を降ろしてから雑貨屋で深淵のドレークさんのいる所を聞いた。


 普通に武器屋も鍛冶屋もあるし、居酒屋なんかも有るよな、それと夜のお姉ちゃんの店もあるのか。


 ここには結構な人が居る、どうしてこんなに人が居るんだ、毎年Sは一人二人でAでも五人程度だと一年で七人で五十年でも最大三五〇人のはずなのに、ここにはそれ以上の人が居る、地上に有った建物と同じ集合住宅が有る一棟に50人住んでいたら500人はいる事になる、絶対にダンジョンで人は死んだりここに来なくなる人もいるので半数いや1/3の百人程度しかいないのに、これだけの建物や店は必要あるのか。


 教えてもらったドレークさんの所にやって来た。ドレークさんの家も集合住宅の中で、普通の家だった。


「よく来たな、お前達の事は聞いている、ここまで来たらここの住宅に住むことが出来る一パーティは一部屋か二部屋使えるがどうする」


「女性と男性用の二部屋でお願いします」


「そうか、AやSだと結婚するなら部屋の追加も有るからな」


「お前達は102と103だな、カギを持って行け、ただしカギは信じるなここにはカギをカギと思わない連中が多いが、面倒事をさけるためにカギはかけろよ」


 カギを掛けても無駄だが、普通は機能すると言う事で良いのかな、大事な物はレイの空間収納に入れるので問題は無い。


「ここを拠点とするのか、それとも通うのかどうする」


「生活物資の買い出しも有りますので数週間に一回は地上に行く予定です」


「ここのドロップ品はどうしているのですか?」


「大半は契約している、商店の連中に売って、必要物資を買ってここに何年も住んでいる者もいる」


「地上に帰らないで生活しているのですか」


「そうなる、下の階へ行けば行って帰って来るだけで数週間かかるのにそこから地上へ行って又戻って来るだけでまた数週間かかるから、ここより上の階でもうレベルが上がらなくなっていてる者達にとっては一月の内の二週間は大きいし、自分たちの適正レベルの階より下にどの位居れるかがレベル上げには大事だからな」


「そうなんですね」


「慣れると数か月に一回地上に行く位になるぞ」


「納める魔石はどうするのですか」


「ここに来れるので有れば魔石は十分獲れる、元々蓄えもあるなら先に払うか、ダンジョンを出る時に纏めて払えば問題ない、ここまでは政府の人間も請求には来ないぞ」


「たまに年単位でここに居座ると死亡確認される場合はある、死人扱いに成っている人間が何人かは居る、組織に入って居ない人間は少ないがそれぞれなので気にするな」


「ここより下の階には説明を聞いたと思うが罠がある、洞窟の毒罠と渓谷の毒霧もあるから毒耐性が無いなら毒耐性のアクセサリーが必要だ」


「王冠でも良いんですか」


「ゴブリンの王冠でも良いが見た目がな・・・、全員分の王冠が有るのか」


「有ります」


「グアッハッハ、お前達は王子様・お姫様パーティか」


 笑う事は無いと思います、ダンジョン内は安全第一です。


「他の人はどうしているのですか

宝箱から出る毒耐性のネックレスとか、ガスマスクとか、ゴブリンの王冠も居るぞ」


「肉がドロップしたらどうしているのですか」


「雑貨屋へ売る、基本ドロップ品で要らない物は売るだな、お前達の空間収納が広いのであればそこに入れて地上で売った方が確実に値段は高いぞ」


「これを一番先に出すのを忘れていました」といってお酒を渡した。


「済まないな、サリバンに言われたか」


「何が良いか聞きました」


「ここでは、今の所酒のドロップは確認されて居ないから酒は地上から持って来なければならない物で一番重いから高いんだ」


「キラービーンのはちみつはドロップしないのですか」


「たまにするが酒とは関係無いよな」


「ここの森には果物は無いのですか」


「ここの森にも果物は在るぞ、スパイス類も取れる、食べられる野菜もどきの草も有るぞ」


「誰もお酒は造らないのですか」


「作る知識のある者が居ても、自分で作っては飲まないと思うぞ」


「自分で作った酒を飲むときに毒無効で飲むとジュースになる、自分で作った腐っている物は食べないと思うぞ」



「部屋にベッドとか持ち込んでも良いんですよね」


「それは良いぞ、雑貨屋に頼めば買えるが値段を見てびっくりするな」


「ここの階の一番遠い所まで行ったらどの位掛かるのですか」


「一番遠い所は・・・はっきり判らないが誰も行かないぞ」


 次の階への階段は左側へ2キロくらい行ったところのある、次の階は砂漠地帯だ。


 平原が果てしなく続いてるので行ってみたいが当面はオーガキングの剣を朝一で試してから草原でカウを狩ってレベル上げするか、最初にカウの剣を見つけるかだが安全のためには最初にオーガキングの剣だよな。

 

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