第40話

 二週間後から地下十階へ行く事にした、キャリーも二週間に一回になる、地下七階のオーク討伐も出来なくなる、地下九階のオーガキングは毎日戦う予定なので、その隙に地下十階へは行きやすくなるはずだ。


 最後にもう一度谷の砦を見に行く事になった、地下九階の心残りはここの探査だ。


 地下九階の谷に近くに人がいる、今までこの谷の近くで人に会ったことは無い。


 この谷の攻略方法を考えているが思いつかない、下から上に向かって行う遠距離攻撃は壁に阻まれて戦いにならない。


 谷を攻略するのかなちょっと興味がある、離れて見せてもらおうと思って谷に近づいた。


 俺たちが谷に近づいたら、谷の近くにいた人達は谷の横へずれて行った、谷を攻略しに来た人では無いのか?


 谷に入った、奥にはそびえ立つ壁が有り、壁の上にはオーガアーチャーとオーガメイジが居る、しばらく来ていなかったので壁のこちら側にも戦士他のオーガが結構いる。


 後ろから先程入口に居た人達がやって来た、人数は八人いる、感じの悪い西棟の人達だ。


「あの人達、何か嫌な感じがします」とアニスが言ったので谷の側面へ移動した、移動したら新しく谷に入って来た人達も同じ方向に移動して来た、反対側へ移動しても反対側へ着いて来て距離を詰めて来た。


「何か用ですか」


「用が有るのはそこに居るサンドラだ」


「サンドラにどんな用事ですか」とアランが前に出て言った。


「サンドラさんが『運』持ちなのは調べがついているから大人しく俺達に渡せ、それとお前達はやり過ぎだ」


「何がやり過ぎなんだ」


「このままここを存続させるためにはお前達は邪魔だ、Sなのに成長が早すぎる、それとお前達が死んでも、サンドラはうまく使ってやるからな」といってニャニャして話して来る。


「俺たちに手を出したら地下十階の人達が黙って居ないぞ」


「そうか、行方不明になるのはダンジョンで良くある事だ、証拠が無ければ問題無い、有っても問題ないがな」


 ジリジリと間合いを詰めて来ている、谷の入口側へは逃げられない様に周りから少しづつ来ている、このままでは不味いぞ。


「俺のスキルは一撃必殺のスキルで手加減できないぞ」と言って剣を出した。


「知ってる、1000本の剣の中から魔物の種類に合った剣を探さないと使えない剣だよな、人間の剣は有るのか、試練している所を見た奴は居ないぞ」


「その手に持っている剣も言葉に出さなくても今日の試練が終わって居なければ出せる番号の剣だよな、そんなことも調べないで俺たちが来ると思うか」


 はったりが効かない、どうする、見張りの横穴まで下がるか、八対六だと対戦には不利だ、それも相手に俺たちの実力を把握されている。


 相手はもう勝ったと考えてゆっくり恐怖を与えてから殺すつもりなのか攻撃して来ない、じりじりと距離を詰めて楽しんでいる、俺たちは少しづつ後退して横穴のある所まで下がって来た。


 ここでオーガを攻撃してもし駄目なら、この横穴に逃げる作戦だったから声に出さなくてもみんな横穴に逃げ込むこと考えていた。


「バース、城壁に向かって《爆炎》を撃て、みんな穴に逃げ込め」


 バースが魔法を準備しているのは判っていた、《爆炎》をあいつらに打ち込むつもりで準備していたが城壁に向けて撃たせた。


「そうは行かせないぞ」と言って指揮を執っている男が迫って来たが、サンドラのホーリーシールドに邪魔されて俺たちは横穴の中に入れた。


 横穴の入口をゴンの盾で守っる、人が二人は並んで入れる程度の入口なので守りに徹したら中々入っては来れない。


 相手はゴンを右か左に寄せて入ってこようとしたがレイが入ってこようとした奴を槍で突いた。


 後はどうするかだ、俺の決断か・・・。


 帰還石で逃げるか?逃げたらこいつらから逃げられるのか?ダンジョンにも入らずに逃げ回っても最後はどこかで決着を迫られる。


 穴の外が騒がしくなった、オーガ達が外にいる奴らを攻撃しに来た、先ほどのバースの《爆炎》がで来たが何分持つ、ここに来れる連中だ俺達より確実に強い、強いがオーガと戦って無双できるほどではないがオーガに負ける事も無い。



「どうする、サンドラを差し出すならお前達を助けてやらないでもないぞ」


「サンドラがこちらに居るから魔法を撃ち込めないのね、サンドラ出て行っては駄目よ」


「そのくらい、私でもわかります」


 仕方ないよな、このままではみんな死んでしまう。占いのばあさんが言っていたのはこの決断か、俺は人殺しになってもこいつらを守る、それは前から決めていた事だ、俺しか今は出来ない事だから、こいつらをあんな奴らから守るれるのは俺だけだ。


「本当に引かないのだな、これが最後の忠告だ」


「穴に逃げ込んだ奴のいう事を聞く者がここに居ると思うかハッハッハ、面白い事を言う坊ちゃんはどこの御曹司様かな、さっさとくたばれ」


 穴への攻撃を後ろで見ている、この集団のボスらしい奴が笑っている。


「ちなみに俺のレベルは70だ、抵抗しても無駄な事が判ったらさっさと死ね」


「レベルが高いのに何でこんなことをしているだ」


「必死でレベルを上げてもここでは良い暮らしは出来ない、良い暮らしをするにはこういう仕事があるならするだろう、ダンジョンの中は特に人の命なんて軽い物さ、お前ら抵抗しても無駄だからさっさとくたばれ」


「おっと、サンドラちゃんは別だから」


 俺は確定の剣を持って、ゴンの横を通り抜けた、中に入ろうとしていた男が攻撃して来たが周りの時間が遅く感じた、何でこの男はゆっくり攻撃して来たのか、でも遠慮はしない一撃で首が飛んだ。


 次にゴンに攻撃している奴がこちらに気が付いて攻撃しようとしている、やはり遅く感じる、横を通り抜ける時に首をはねた。


 まるでただ通り過ぎた様にしか見えなかったが二人の首が一撃で飛んだ、ボスの男が何か言っている。


 魔法の《ファイアーボール》が飛んで来た、剣を振ると切れて右・左に分かれた落ちた、真っすぐボスの所へ向かっている、矢も飛んで来るがそれも剣で切り落とした。


 「こんな事は信じないぞ、俺より強いはずはない」と言いながら剣で向かって来た、何かスキルを使っているのか剣に魔力が集まっている、俺に当たらなければ同じだ、この剣が有ればどんな攻撃も防ぐことが出来る。


 ボスに迫って行くと落とし穴が開いたり、土魔法の《バレット》が飛んできたが剣を振ると魔力が消え落とし穴は元に戻り、音速で飛んで来るバレットも切り落とせる。


 魔法使いは何が起きているのか理解出来なかった。


 俺はボスの前まで来た、ただ普通に歩いて来た様に見えただろう。


 ポスが切り付けて来た、何か剣に魔力かスキルが乗った攻撃だ、剣を持ちあげて片手で防いだ、ガキーンと音はしたがスキルは発動しなかった様だ、そのまま相手の剣が砕けた。


「もう良いか、死ね」


「待ってくれ、俺は命令されてやっただけだ、見逃してくれたらもう襲わないと誓うから」


「それはだめかな、俺はここに居る敵は殲滅する事に決めた」


 剣を振った、男の首はポトリ落ちた。


 残りは五人、まだオーガと戦っているのが三人、後の一人は俺が戦いが始めた時に逃げた、もう一人はうずくまっているだけでオーガとも戦っていない魔法使いだ。


 逃げた奴は一人でこの階から地上まで逃げられるかは不明だか仕方ない、だが一言言っておく。


「この次どこかで会ったら殺すからな」と逃げていく男に向かって叫んだ。


 その声を聴いて魔法使いが気絶した。


 魔法使いに向かって足を進めた。


 後ろからサンドラが抱き着いて来た。


「この剣を持っている時に剣が当たったらサンドラが死ぬかもしれないから離れていて」


「もう良い、もうこれ以上殺さなくても良い」


「離れて、こいつらをそのままには出来ないよ」


「私の好きな人に無抵抗な人を殺しをしてほしくない」


 頭の中のスイッチがプシューと言って切れて、手に持っていた剣が消えた。


 何が起こった、今サンドラは何て言った・・・。


 俺たちにもオーガが迫って来た。


「谷から出るぞ」といって谷から撤退した、向かって来るオーガは一撃で倒し谷から逃げ出した。


 中で戦っていた奴らと魔法使いはどうなったのかは知らない、俺たちが逃げ込んだ穴に逃げ込んで持久戦で戦えば四人居るのだから、もしかしたら生き延びられるかもしれない。


 谷の外に出て周りにオーガが居ない事を確認して休息した。


 自分の手を見た、人殺しか、仕方ないよな、あの状態を打破するには確定剣を使うしか無かった、逃げて行った奴と谷に残った奴を始末出来なかったが本当に良かったのだろうか、じっと手を見ながら考えた。


「それで良かったのですよ」とサンドラが声を掛けて来て俺が見ていた手の上に手を重ねて握った。


 そうだよな、逃げる奴や襲ってこない奴まで殺す事は無いよな、でも人を殺したという事実は、悪人を殺したとしてもずっと心に残る。


 帰還石で逃げればよかった。俺の心は知らない何かに押し潰された。

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