第33話

「向こうの方に右目が魔力を感じると言っている」


「また、オークキングですか」 


 戦闘態勢をみんなが取った。


「オークキングではないと右目が言っている」


「何なんでしょうか」


「見た目は宝箱ですね」バースが見に行って確認した。


「魔力探査は宝箱には効かないので罠ですね」とアニスが言った。


「宝箱ですか」


「罠ではなく宝箱ですね」とアニスは罠説を否定した、隠されても無い罠でアニスのスキルに引っかからない罠は無い。


「この汚いのが宝箱ですか」


「誰が開けます」


「私達は空けません」


「サンドラさん私が開けて良いですか」と俺が言った


「何でサンドラに聞くんだ」


「ゴンさんが良いと思います」とサンドラが言った。


 「ゴンちゃん開けてみて」


「・・・・・」


 もう一度罠が無いか良く確認したが罠はなさそうだ。


 開けると石が一つ入っていた・・・、見た目は普通の石だよな、宝箱から出る石ってまさか・・あの石か?


「ゴン、取るのは待て」と俺が止めた。


 手を出していたゴンが止まった。


「罠とかですか」


「罠ではないが呪いかもしれない」


「呪いですか」とサンドラが聞き返して来た。


「あれは帰還石かも知れない」


「帰還石ですか」


「帰還石だと帰る所が決まっていて、移転石だと決められるそうだ、最初に触った者しか使えないと言われている」


「誰が触るのですか」


「俺はサンドラが良いと思う」


「どうしてですか」


「サンドラは後衛職でホーリーシールドも使えるから最終的に一人でもダンジョンを出る手段が有った方が良い」


「魔物に攻撃されてもシールドで一撃を耐えられれば、この石で逃げる事が出来る、先ほどの黒いオークキングが現れて、攻撃力が足りない場合これが有れば皆で逃げれたと思わないか」


「移転石は触った本人が行った事の有るダンジョン内の場所を最初に選べるから早く設定しないと面倒な事になる」


「サンドラがその面倒な事に巻き込まれないの」


「巻き込まれないとは言えないが片道しか使えないので大丈夫と思う」


「アニスでも良いがアニスは戦闘に参加するので残る候補はバースかな」


「後衛職だからですか」


「そうだ」


「俺は一番安全と思われるサンドラが持っていると脱出できる可能性が一番高いと思うがどうだ」


「それはそうですが、私達がこのパーティを抜けたらどうするのですか」


「その時はその時だな、俺たちは帰る時に困る事は元々無い様にする方針だから」


「なんかずるく有りませんか」


「俺たちはそれでも良いと思っているから」


「解りました、取ってみますね」


 サンドラが石に触ると石は輝き小さな青い石になった。


「何か変わったの」


「何処に行くか指定してくださいと頭の中で言われています」


「地下一階の入口右の横道の奥にある、何も無い部屋はどうだ」


「そんな部屋有りましたね」


「何度言ってもスライムが居ない部屋、何のための部屋か不明の部屋が」


「良く考えると各階に入口近くに部屋はあるが、地下一階以外は魔物が居る場合もあるよな」


「旨く設定出来た見たいです」


 黒いオークキングの報酬の宝箱なのか、それとも元々のオークキングの報酬なのか、又来たら宝箱は有るのか、再検証は必要だ。


 今回の帰りにはキャリーするパーティは居ない予定だ、明日帰る時に試してみるか、一度試してみないと、どおなるのか解らない。


 次の日の午後キャンプ地から出た、帰るのは俺達だけだ、次の階の入口で帰還石を使った、帰還石を持ってる人に触れば一緒に移転出来るはずだ。


 皆がサンドラの手を掴み用意が出来た、ふわっと感じたら部屋の中に居た、ダンジョン一階の部屋だ・・・・。


 誰かいる・・・・。


 誰も居ないはずの部屋に男と女のカップルがイチャイチャしていた。


「こんにちは続けてください、俺たちは行きますんで」


 カップルはこちらを見ながら何も言わなかった・・・。


「大丈夫ですかね、バレましたよね」


「わからん、自分たちの事が大切なら今日の事は言わないと思うぞ」


「どうしてですか」


「ダンジョンで魔物討伐もしないで地下一階でご休憩している所を見られて俺たちの事を言えると思うか」


「俺達の事を言っても何でそこに居たのかの信ぴょう性が問われる、見た事を聞いて皆は信じられると思うか、変な事を言うと不味い薬か何かだと思われ、別れさせられる事も考えられるから、自分たちの事をちょっと考えれば言わないと思うぞ、それにあいつらは俺たちが出現した瞬間は見ていないはずだ」


「あの状態では見れないですよね」


「そういう事だ」


 早く帰って来たのでどうするか・・・。


「ここで解散で夕食の時に又会おう」


「何処へ行くの」


「資料室へ行く」


「私達も行くわ」


「そうか」


「僕たちは帰って寝るよ」


 いつもの資料室へ来ている、ダンジョンの宝箱から出る物について再度調べる事にした。


 移転石は石と契約者が居ないと発動しない、移転先の登録には回数制限がある、移転石はダンジョンの魔力を吸収して発動するのでダンジョン内での使用しか出来ない。


 使用者を設定すると石の色が変わる、帰還場所もダンジョン内、帰還人数は発動者に触れてる人のみ、移転先は各階に一か所で位置も決まっている、契約者が死亡したら石は消える。


「石は行先を変更出来るみたいだが出来そうか」


「ダンジョンを出ると繋がりが切れて何も解らないです」


「繋がっている感じがするのか」


「そうです」


「この青い石どうしましょ」


「ネックレスとかに加工して身に着けるのが一番だと思うどうする」


「同じような石はダンジョン内で拾える、記念に持って帰る奴も居るからネックレスに加工しても移転石だとは誰も思わないぞ」


「そうなんですか」


「地下六階の沼地にも落ちているって話だ」


「沼地の中から拾うのですか」


「あそこのポイズンフロッグを倒すとたまに一緒に残るらしいがドロップ品なのかどうかは何も使えない無い水色の石なので意見が分かれるらしい」


「誰かに聞かれたらそう答えると良いぞ、それとボイズンフロッグの石はもう少し透明な水色だがな」


「良く知っていますね」


「雑貨屋のおやじに教えてもらったからな」


「どうしてですか」


「落ちてたら、買い取ると言っていた」


「どうするんですかね」


「CとかDとかの帰る時の記念品らしい」


「行った事も無い階のお土産ですか」


「外の知らない人は地下六階でポイズンフロックと戦った事があると思うんだろうからな」


「知っている人は知っているが、詳しく知らない人はそんなもんですよね」


「雑貨屋のおやじに頼めば確実だと思う、この青色が珍しくて良いとか言っておけば石も交換されないと思うぞ」


「そうしますね」


「どうせ明日の朝、雑貨屋へ行くから一緒に行くか」


「そうします」


「アニスはどうしてついて来たんだ」


「石の事で聞きたい事があってです」


「どういう事だ」


「どうしてサンドラを石の契約者にした」


「それが一番安全で帰還出来る確率が上がるからだと説明したと思うが」


「本当にそれだけか」


「あのスキルに絡む事は本人には影響を与えないんだよな」


「そうです」


「俺達が運が悪く窮地に陥ったときに一番影響を受けないのは誰れだと思う、そしてその時一番帰還の確率が高いのは誰だ、俺は安全第一のパーティリーターとしてはサンドラが居れば最悪の時にも帰還出来ると信じている」


「今回の事はバースの魔法が黒いオークに弱かった事と謎だがゴンちゃんの一撃がプラスとマイナイスでゼロかな、ゴンちゃんの一撃が詳しく解れば収支的にはプラスだと思っている」


「ゴンさんのスキルって《限界突破》ですよね」


「Dの限界を突破し、とうとうCの限界も突破してAに突入しているそはそのためだ」


「本当は自分の限界を突破するのはレベルだけでは無く、自分が出す攻撃力をも突破するのかもしれない、ゴンの叫びを聞いたのは初めてだ」


「今度、今回の事をゴンに聞いてみるか」


「ゴンさんが何言ってるのか解るんですか?」とアニスが聞いて来た。


「それは判るから良い」


「そうなんですね」


 調べてもやはり地下七階で宝箱が見つかったという資料は無かった。


「帰還石の事は誰にも言うな、頼まれ事が増えるぞ」


「それと今後は地下六階レベル上げもするぞ」


「どうしてですか」


「あまり早く帰ってくると目立つので時間潰しとキャリーしている時は使わないぞ」


「俺たちが戦う訳で無いので良いですよ」


「後はあの洞窟へ行って宝箱があるかどうか確かめないとだな」


「黒いオークキングもまた出ますかね?」


 黒いオークが出たらどうする?対策は無いがバースに魔法を何発か打ち込んでもらって、駄目だったら最悪は帰還石で逃げるか俺の確定の剣で倒すしかない。


「バースは魔力を温存してくれ、ゴンはあの時どうだった」


「・・・・・」


「力が溢れて来て、そのまま剣に乗った、『勇気100倍』より力が溢れる感じだったか」


「ゴンには発動条件は解らないのか?」


「・・・・・」


「解らいか、そうか仕方無いよな」発動条件不明のやはり限界突破か?


 

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