第10話 二年九か月

 先輩達は逃げるように去って行った、一緒に居たのはアドルフ達だよな。


「何だったんですかね」


「意図してこの枝道にコボルトを追い込んだではないのか」


「そんな事してどうなるの?」


「俺たちは問題ないが、普通にこの階層で戦っているパーティならば最後の小部屋に入って入口の通路で戦うしか生き残る方法は無いと思うぞ」

 最悪全員死亡かもしれない、年に何件かそういう事があるから助けに来てくれたのかも知れないが・・・・コボルトの後から来た、あの人達であれば最後の集団がここまで来るのはおかしいだろう、むしろコボルト達を追い立てていたのではないのかと思ってしまうよな。


「悪く考えるときりが無いのでやめません」


「そだな、前に注意すれと言われた事が起きたので悪く考えすぎかもしれない」


 

「先輩、今回の作戦は相手に恩を売るだけで私達に危険は無いって言いませんでしたか」アドルフが先輩冒険者に聞いてる。


「お前達が言っていた事は本当なのか」イラつきながら聞き返された。


「何の事です」


「あの先頭に居た男が《一撃必殺》のスキル持ちでお前たちに戦っても良いと剣を持って言ったんだよな」


「そうです」


「あいつの事は知っているがスキルは魔物に対して1,000本の剣の中から一種類生き物に対して1本しか剣が使えない奴なんだぞ」


「対人用の剣は持っていなかったはずだ、お前たちはあいつが剣を持って手加減出来ないってはっきり聞いたんだよな」


「そうです」


「あいつは魔物と同じように人に対しても無慈悲に殺す事が出来るのか、ここは地下三階だからな誰も助けに来てくれない、戦ったら死亡確定じゃないか、こんな事は聞いて居ない、一度帰るぞ」


「先輩、大丈夫ですか」


「うるさい、黙ってろ」



「俺達も帰るか、最後にコボルト大漁だったな」


「いつもより多かったかですよね、先輩また来てくれないかな」 レイは呑気に何言ってるんだか。


「油断していると危険だからな帰りもしっかり探査してくれよ」


「ここの枝道ってアンラッキーな枝道ですか、それともラッキーな枝道ですか」


「俺たちにとってはラッキーな枝道だな、この枝道をアドルフの枝道と命名しょう」


「えー何か嫌です」


「そうか、いつもあいつらが来ると魔物も来て討伐数が増えているような気がするぞ」


「それはそうですか名前が嫌です」とアニスはアドルフ達を嫌っている様だ。


「では、幸運の枝道はどうだ」


「私達だけが幸運で他の人達には不幸だったかも知れませんよ」とサンドラに言われた。


「その事は考えない様にする」


 今日も一日が終わった、まだ昼過ぎたばかりだ、食堂で昼飯食ってから今日は資料室で調べものをするか。


 皆は何するの、女子は友達と夕方待ち合わせらしい、男か男なのか・・・と遠慮も無くバースが聞いていたが元のパーティの女子が待ち合わせ相手らしい、Aのパーティに帰るのか?


 レイに預けている自分たちの取り分の魔石を受け取っていた、何か買い物ですかね、女子二人で行動するらしいから昼間は大丈夫でしょ。


 夜はサリバンさんの所へ一応、有ったことの報告と相談に来た。


「魔石を置いて置きます、それと相談したい事があります」


「何か問題か」


「前に言っていた事なのかどうなのか判断出来なくて」


「どうした」


「地下三階の枝道でコボルトの集団に遭遇しました、最初は五匹・次も五匹最後は六匹がそんなに間隔を開けずに襲ってきました、その後に西の先輩達に会いました」


「そんなに来たのか良く無事だったな」


「15匹は俺が倒しました、パーティ全員無事ですがその後に西の先輩とまたA級のアドルフ達が来て揉めそうになりましたが何も無く帰って行きました」


「これ、どお思います」


「普通は魔物を討伐出来ずに戦っている所へやって来て恩を売る計画かな」


「場所は三階の枝道の奥で普通、誰も行かない小部屋の前だったんだよな」


「今まで会ったのはアドルフ達以外いません」


「そうか、それなら最悪はお前たちを始末するために来た可能性もあるな」


「サンドラは防御魔法は使えるのか」


「使えるはずです」


「聖魔法使いだよな」


「そうです」


「まだレベルが低いと発現していないかも知れないが魔法結界か魔法防御が使えるはずだ」


「忍者は確か《身隠し》のスキル持ちだよな」


「そう聞きました」


「二人で一度魔物の視界から消えて、防御魔法を掛けて忍者のスキルで《身隠し》すれば二人は魔物から見えなくなる、防御魔法が使えるのであればコボルト程度の攻撃は防げるはずだ」


「最終的にはお前たちが死んだ後に探しに来る予定だった可能性もある、後はたまたま魔物を追っていたら枝道に入ったとかだな、それにしては数が多いな」


 彼女たちは生き残って俺たちは死ぬ予定だったのか、でも遭遇した時に明らかに相手の方がレべルが上で強いと思ったが俺たちを殺す計画なら、どうして何もせずに去ったのかそこが不思議だよな。


 彼女たちにその現場を見られたくなかったから、そのまま去ったのか?


「後は魔物で無く、人が襲ってくる可能性に注意すれ」


 サリバンさんも俺と一緒の結論か、気が重たい。


 何事も無く、三か月が経った、西の連中に襲われるかも知れないと警戒したが来ない。

 

 ダンジョンにも毎日入っているが当たりは無し、誰も運のスキル持ちで無かったようだ。


 幸運の女神様は何処へ行ったのですか、あと六か月掛かって九か月になっても最後の11か月まで行っても平均の誤差の範囲内だ、三か月はまだまだ余裕だが最近あたりが早かったので辛い。


 そんな事よりも、サンドラちゃんが良く体調不良を起こして月に一度4日ほどお休みになる、十歳を超えているので女性特有の問題なのかは聞けませんがちよっと心配。


 パーティとしては回復役が居ないので保険が無い状態で地下四階の探査は本当に入口付近でグレーダウルフに会えなくても、階段から離れない事にしている。


 用心のためだかサンドラちゃんが居ない時は遠くへ行って、俺たちがケガした時にはサンドラちゃんが一番責任を感じるから。


 戦闘で危険な目に逢ったホーンウルフには3か月で10回ほど会ったが無難に討伐出来ている、集団で来られない限り戦闘しても大丈夫そうだ。




 最近、S組のみんなのレベルが上がった、まだ15だけどやはり地下四階に来てから上がりが早い、毎日コボルトキングを倒しているのでそれで上りが早いのかはわからない。


 でもまだレベル15だよな、レベルは上げれば上げるほどに経験値が必要になる、高いレベルの魔物を倒さないと上がらなくなるので流石にレベル51のゴンちゃんは上がりませんね。


 俺たちもレベルが20を超えた時に地下八階辺りにいないとレベルが上がらなくなるはずだ。


 ダンジョンの中もこの時期になると人数が大分減ったように感じる、Eが居なくなって少し遅れていたDも居なくなったら、ここからはC以上となるがC以上はレベルを50以上に上げないとMaxならないので地下4階に突入していないとレベル上げが遅い。


 地下四階に人が多くなるとみんなホーンウルフと戦うのは嫌なのでホーンウルフが残り、また入口付近で遭遇するかも知れない。


 今は戦っても斃せるので逆に多くホーンウルフに会って剣を試さないと最後はどこに居るのかもわからないホーンウルフ探しになるな。


 地下四階は広い草原で三階から降りて来たところの反対側へ10 キロほど行ったところに地下五階への階段が有る。


 毎日来ているがウルフ以外は居ない、肉食の狼が食料の肉が無くても生きていけるのはダンジョンの不思議だよな、肉体の有るウルフも肉体の無いウルフも魔石の魔力だけで生きていけるのかと思っています。


 六人態勢なので結構奥まで来てる、グレーダウルフの剣探しをメインにしていますが俺以外のメンバーの戦闘経験のためだ。


 もともとゴンは他のパーテイで戦っていたのでこの階ではもう遅れをとる事は無いが、他の四人は戦闘経験が足りないという結論になり訓練してる。


 基本グレータウルフとホーンウルフは剣の試練でランドウルフとブラックウルフで戦闘訓練をしてるがまだまだだ。


 ゴンちゃんと俺が抜けたパーティは悲惨だ、攻撃はバースの魔法で防御はサンドラの防御魔法、レイは攻撃するも跳ね返される、たまに忍者のアニスの攻撃が入るが安定するには誰かが盾役をしないと安定しない。


 ランドウルフは何も考えずに突撃して来るのでサンドラの盾で防ぐと弾かれて怯んだところをバースの魔法でダメージを与えてアニスの刀で止めを刺すというのが安定している、ブラックウルフだとサンドラの盾にはぶつからない、バースの魔法も躱すのでアニスも攻撃に行けない。


 一番良かったのはブラックウルフが現れたらバースが魔法で攻撃する、当然躱されるがその時アニスに《身隠れ》を使い隠れる、バースを攻撃して来たところをサンドラの盾で守りそれを躱して移動した時にアニスが不意打ちの攻撃をするというパターンだった。


 問題はアニスの攻撃力で致命傷には至らなかった、ここでレイの《勇気100倍》を使うと刀が輝くので不意打ちが出来ないという問題が発生して詰めれない。


 





 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る