第8話 二年6か月

 次日の地下四階で剣を選ぶ前に未来を感じられるのかを聞いた


「アニスさん、どの番号の剣を選べば良いと思いますか」


「嫌な感じは何処もしません」


「何か感じ無いの」


「何も感じませんね」


「駄目かー」


「特別な日では無いので昨日の続きで行くか」


 いつもの日常が続いてます、毎日地下四階のここに来て剣を試して帰ると


「パシュー、コロン」


「あれ、ランドウルフ消えた」


「どうしたのかな、まだ四週目だよ」


「ヤッターぞ、最短記録更新だ、それも前回も短かったが今回はもっと短いぞ」


「驚いたなー、みんな階段まで戻るぞ」


 地下三階へ上がる階段横の壁に戻って来た、やった七本目だ五か月足らずで二本は凄いよな、これから次が11か月掛かっても耐えられる気がする。


「どうしたんですか、運が向いて来たのですかね」


「確率で考えると普通にこの剣を探して試した回数は200回を超えていて一番多いのだから2か月は超えている計算にはなるかな」


「そんなこと言わずに、次もすぐに当たりそうですよ」


「そうなんだよな、ウルフ系の当たりゾーンに入ったのかも知れない」


「同系統は近くにあるっていうやつですか」


「そうだ、最初の出だしの番号が良かったからかもな」


「出だしの番号ってコボルトキングからの続きでしょ」


「あの時1番へ戻るかどう迷ってたじゃないか」


「そんな事も有りましたね」




「魔石ここに置きますね」


「いつもありがとうな」


「どういたしまして」


「二人増えたのに魔石が余るのか」


「俺たちは元々朝一で行って最初の魔物を狩ってから地下四階に行って帰って来てましたが最近は地下三階の枝道探査もやってますからね」


「枝道と言えば宝箱有りましたよ」


「何処にあったんだ」


「地下三階の枝道のどこかです」


「地下三階の枝道か」


「何回見つけた」


「一回だけで中身は鉄の剣でした」


「三階なら仕方ないか」


「それよりも宝箱の前に罠らしき物が有ってアニスに止められました」


「罠はどうした」


「バースがドカーンとやりましたよ」


「そうか、これは皆に知らせた方が良いのか知らせない方がいいのか微妙だな」


「宝箱には罠がある事を知らせればいいのではないですか」


「お前達以外で地下三階の枝道に入る奴って居るのか」


「新人がたまに入って来る事がありますが、枝道で人に会った事はほとんど無いので入る人はいないと思いますよ」


「普通は枝道に入れる力が有れば地下四階に行って、魔物を倒した方がレベルが上がりますからね」


「それが普通の考えだよな」


「宝箱の中身が普通の剣ではわざわざ探すだけ無駄です、それも罠付きですよ」


「わざわざ探す奴は居ないと思うが遭遇した場合、罠の事を考えろと周知しとく」



「お前たちのパーティ名は何にした」 唐突にサリバンさんに聞かれた。


「俺たちにパーティ名は有りませんよ」


「6人に成ったのだから名前くらい付けたらどうだ」


「二人は臨時って言ってなかったですか」


「正式に六人態勢にはしないのか」


「二人は戻るんですから、今、名前をメリットが有りません」


「そうなのか、幸運の女神が居るという話を聞いたぞ」


「何処で聞いたんですか、確率から行ったらそんな事は無いと思いますよ」


 壁の所で話したのを誰かに聞かれたのか?


「俺が知っているという事は西の奴らも知っているという事だぞ」


「そうなんですか、何か不味い事でも有りますか」


「幸運を持っている者を探す為には、わずかな事も関連付けて考える奴らがいるという事だ」


「一緒に居ても運は良くなるのですか」


「周りの者を幸せにして、自分も幸せになるのが幸運だからな、逆に周りの者を不幸にするのは悪運だ」


 幸運の女神か、剣の当たりの事は確率の問題でそんなに幸運かと言われると疑問だな、でも最近の二本が短い期間で見つかった事は幸運だが一本目の時は彼女達はいなかったのにそれを知らないとこうなるのか。


「幸運は使い方によっては無くなるので本人が攫われて無事に帰って来たらどお思う」


「運が良かったか相手が間抜けだっかですね」


「その攫われているのを助けたらどお思う」


「助けた人に感謝すると思います」


「奴らは自作自演もするからな、ダンジョン内ではお前たちにわざと強い魔物を擦り付けてピンチになった所を助けるとかは有りそうだ、悪い事が有って、良い事が有った時は良く考えることだな」


「その手は俺たちには無理だと思いますよ、地下四階の入口付近までしか行きません、地下三階は無敵ですから」


「地下三階の枝道で魔物が集団出来たらお前たちでも無理だろう」


「今までの集団討伐の記録は六匹です」


「それくらいだよな、魔物が何倍も居たら難しいだろう」


「わかりませんね、戦った事が無いので」


「そう言う事だ気をつけろよ」


「彼女達をA級パーティに戻しますか」


「本人たちの意見もあるだろうからなよく話し合ってからだな、もし幸運の女神なら、幸運の女神はお前たちを選んだんだよな、そうなると難しいかも知れないぞ」


「彼女達が最良の選択をして、俺たちの所に来たという事ですか」


「そうなるな、それは出て行く時も同じだと思うぞ」


「聞いて出て行かない選択なら、本気で今後を考えた方が良いぞ」


 俺はA級パーティに戻る前提での何年か居ると考えるのが普通の考えだ、A級パーティに戻らなければここを出て行くのが遅くなる、Sの俺たちの夢に付き合わせる訳にはいかない、それが俺たちに必要な優秀なスキル持ちで有ってもだ。


 俺たちの部屋で作戦会議を魔石を届けた夜にしている、何と言ってもサリバンさんから色々な情報を貰うのでその対策会議的な面と反省会的な面もある。


 今回の事は皆に何と言うか・・・少し重い。


「アニスさんの事がばれている」


「どういう事ですか」


「アニスさんが何らかの幸運を運ぶ事を知られている」


「サリバンさんにですよね」


「サリバンさんは西の連中も知っているだろうから注意すれと言われた」


「そうなのか、何に注意すれって言われたの」


「ダンジョン内は魔物でダンジョンの外は誘拐」


「それは本気ですか」


「おれには解らないが注意して行こう」


「具体的にはアニスさんは一人で行動しない様に」


「ダンジョン内の地下四階は入口付近で行動して奥には行かない」


「この二点を守れば大体大丈夫と思うぞ」


 奥には行かないと言いながら少し入ってきています、ランドウルフしか出て来ないからです、もう五匹目です。


「嫌な感じがする、少し入口から離れたので戻るぞ」


「その方が良いですね」


 その時そいつが現れた、ホーンウルフだ、この階ブラックウルフとの双璧の片割れ最強種が現れた、ゴンが盾でホーンウルフの攻撃を止めた、何かゴンが変だ、ホーンウルフの角には雷系の魔法特性が付いてくるので角は要注意なのにまともに盾と当たった。


 ゴンちゃんが固まっている、倒れていないが固まっている。


「バース、魔法を」


「《爆炎》」


 ホーンウルフは《爆炎》を躱すため後ろに下がった。


「《キュアー》《ヒール》」とサンドラがゴンを回復した。


「このままでは不味い、ゴン大丈夫か」


「・・・・」


「角には注意すれよ」


「・・・・」


「お前を置いては逃げれない」


「レイも攻撃準備とスキルも準備してくれ」


「アニスとサンドラは少し離れて、逃げられたら逃げて」


「バースは魔法準備」


「レイ、俺にも剣をくれ」


「下がりながら戦うぞ、少しづつ下がれよ、一気に下がると又襲ってくるぞ」


 アニスとサンドラが見えなくなった、逃げたのか、これで大丈夫だ、ちょっとミスたな、四人で戦いながら下がればどうにかなるだろう。


 ホーンウルフはゴンに向かって行ったが今度はうまく角を逸らして盾で体を押した、角さえどうにか出来ればレベルはゴンの方が上なので十分戦える。


 ゴンと戦わないで俺たちに来たら危ない、その可能性はあるがこっちに来たら三人でどうにかするしかない、今はゴンがうまく倒す隙を作ってレイの《勇気100倍》に賭けるしかない。



 




 


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