第12話:誓約と闇の契約者

 モンタギュー公爵家の力を使える事はとても大きかったです。

 近隣のギルドマスターに命じて、最高の冒険者を呼び出すことができました。


「どうですか、依頼を受けてもらえますか?」


「モンタギュー公爵家令嬢、ガイア様直々の御依頼では断れませんね。

 よろこんで御受けさせていただきます。

 ですが絶対の御約束はできませんので、手付金は不要です。

 その代わり、不死鳥の血や竜の肝が手に入らなかったとしても、依頼の失敗にはしないでいただきたい」


 冒険者パーティー「死霊の使い」のリーダーであるアルフレッドが、普通では考えられない条件を提示してきました。

 

 普通の採集や狩猟の依頼は、手付を渡す代わりに、失敗した場合は手付を返した上に違約金が発生します。


 ですが、冒険者組合を通して特別契約した場合は、難易度に応じて色々と条件を変えることがあります。


 今回依頼する素材は、蘇生魔術に必要な、非常に収集難度が高い品々です。

 違約金をともなうような契約では、誰も依頼を受けてくれません。


 しかも不死鳥や竜が住むような場所は、人跡未踏の場所が多いのです。

 移動するだけで多くの日数がかかるので、移動費用は成否に関係なく請求するパーティーが多いのです。


 移動だけで疲弊するような場所に行き、並の人間では絶対に勝てない不死鳥や竜を斃して素材を取ってくるのです。


 大切な家族を残して秘境に屍を晒す可能性が高いのです。

 冒険者の多くが、違約金なしで手付金を払う条件でなければ引き受けません。

 それをこんな条件を出すのですから、私が疑問に思うのは当然です。


「随分と優しい条件を出してくれるのですね、何か他に条件があるのですか?」


「そんなモノはありませんよ、私達の誇り、男の尊厳ですよ」


 アルフレッドは随分と誇り高い性格なのですね。

 それとも、私達貴族に思うところがあるのかもしれません。


 貴族に弱みを見せたくない、貴族に下に見られたくない、自分は身分に頭を下げたりしないという気概なのかもしれません。


 畜生腹とさげすまれ、地下牢で育てられた私には分かる気がします。

 アルフレッド身体の奥底からは、抑えているのに抑えきれずに漏れ出す、莫大な魔力が感じられます。


 性格も魔力の才能も私と似ているのかもしれません。

 御姉様の身代わりを務めていますから、親しく接するわけにはいきませんが、魅かれるところがあります。


「それにしても、依頼の素材は蘇生に使うモノばかりですね。

 誰か生き返らせたい人でもいるのですか?」


 さすが超一流の魔法使いアルフレッドですね。

 依頼した素材だけで私が何をしたいのか予測しています。


 本当は悟られないように、素材ごとバラバラに依頼したかったのですが、あまりに収集が難しい素材ばかりで「死霊の使い」以外に集められるパーティーがいません。


 一般依頼で多くの冒険者組合に声をかけていますが、集められる可能性が低すぎるので「死霊の使い」に指名依頼することになったのです。


 ですがなぜ悟ったことを公言したのでしょう?

 場合によったら、私が口封じしようとするかもしれないのです。


 実力に裏打ちされた自身なのかもしれませんが、迂闊といえば迂闊です。

 ちょっと探ってみましょう。

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