第13話:生と死の秘密、闇に交わる運命

 何気ない会話の応酬で互いの腹に中にある物を探り合いました。

 先に覚悟を決めて核心に触れる話をしたのはアルフレッドでした。


「実際に会って話をさせてもらって、ガイア嬢が悪い人間とは思えなかった。

 だから、私も覚悟を決めて話をさせてもらった。

 ガイア嬢の実力も想像できる。

 そのうえで警戒されるようなことを口にした。

 私には絶対に譲れないことがある。

 場合によったら殺し合いになるかもしれないから、嘘偽りなく答えてもらいた。

 蘇生の魔術で誰を蘇らせるつもりですか?!」


 さて、どう答えるべきでしょう?

 私の事を御姉様だと思っているのは間違いないですね。

 その点を疑っているそぶりは一切ありません。


 誰か、絶対に蘇らせたくない人間いるのは確かです。

 しかもその相手は、御姉様が蘇生させる可能性のある人間で、アルフレッドが心底嫌っている人間なのでしょう。


 本当の事を言えるのなら簡単です。

 アルフレッドと殺しあう必要などなくなります。

 ですが、御姉様が死んでいる事は絶対に言えません。


 御姉様を蘇らせるためだとは、口が裂けても言えません。

 アルフレッドの嫌っている人間ではなくて、御姉様が蘇らえらせても不思議ではない人間を答える必要があります。


 ではまずアルフレッドの嫌っている人間から予想しなければいけません。

 私が蘇生の素材を冒険者組合に依頼したのはごく最近です。

 トンマーゾ王太子やルディーニ公爵たちを殺した直後です。


 そう考えれば、アルフレッドが蘇生させたくない人間は、トンマーゾ王太子やルディーニ公爵たちという事になります。


 御姉様はトンマーゾ王太子の婚約者という事になっていました。

 御姉様の事を権力欲のある人間だと誤解していたら、トンマーゾ王太子を蘇らそうとしていると誤解しても仕方ありません。


 ルディーニ公爵もエンマの兄ですから、伯父という事になります。

 蘇らそうとしていると誤解されたとしても仕方ありません。


「誤解で殺しあいになるのは嫌なので嘘偽りのない真実を話しましょう。

 誰かを蘇らせるために集めているわけではありません。

 トンマーゾ王太子やルディーニ公爵を蘇らそうというのではありません。

 これは秘密にしている事ですが、私はトンマーゾ王太子やルディーニ公爵に襲われて死にかけているのです。

 いえ、一度死んでいるのです。

 それを秘匿していた素材を使って蘇ったのです。

 だから使いきってしまった素材を集めておかないといけないのです」


 アルフレッドが私を殺しかねない視線で睨みつけています。

 信じてもらえていないようです。

 ですがこんなことが理由で殺し合いなど真っ平です。


「真実かどうかはアルフレッドが直接確かめればいいでしょう」


「分かった、そうさせてもらおう」

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