第10話:闇の呪縛

 アンドレアは馬鹿ですね、私を脅すのにグレタを殺すと口にしました!

 愚かな男、私が心から大切にしている者を傷つけると口にして、ただですむと思っているのですから!


 御姉様とグレタの遺体を並べて屍姦する、ですって?!

 そんな事を口にして生き延びられると思っていると、愚かを通り越して、狂人としか思えませんね!


 御姉様の御遺体を地下牢に運び込んできた時に、自分の髪の毛を渡しに採取されているとは思わないとは、危機感の欠片も無いのですね。

 そんな事だから、御姉様を殺させるような取り返しのつかない失敗をするのです!


 もう何時でも呪殺できるように、準備は整えているのよ。

 呪いに使う人形も、そのために必要な魔血晶も用意してあります。


 私の魔力と怨念の籠った血液を結晶化して、その結晶に更に限界まで魔力と怨念を込めて、呪殺に使う力を持たせた魔血晶!


「分かっています、父上の役に立ちましょう。

 ですが、私にも利益を与えてください。

 御姉様を蘇らせるための素材を集めます。

 素材を集められる人材を確保しますから、邪魔はしないでください」


 アンドレアに阿るような言葉遣いをする自分に反吐がでます。

 時間稼ぎのためとはいえ、忸怩たる想いです。


 ですがしかたありません、御姉様を殺した人間に復讐するためです。

 御姉様を蘇らせるためです、我慢するしかありません!


 時機を見て必ずアンドレアを殺します!

 できるだけ早く殺す機会を作ります、激痛を与えます!

「殺してくれ」と泣いて頼むくらいの激痛を与えます!


 殺した後は遺体を使い魔にして操り、こき使ってやります。

 そう考えれば少しは気が晴れます。


「……分かった、それくらいなら認めてやる。

 ガイアが蘇っても影武者として生かしておいてやる。

 感謝して俺の言う通りに動け、まずはエンマに全てを吐かせろ!」


 アンドレアの言い草に、怒りが激発しそうになりましたが、心配そうに私を見つめてくれるグレタが部屋にいてくれるので、何とか怒りを抑えることができます。


 魔血晶の作り方を覚えてから、毎日少しずつ作りためてきた貴重な魔血晶です。

 強力な魔法や呪術を使う人間には、宝石など足元にも及ばないくらい貴重です。

 その一つを使ってエンマに呪いをかけました!


 呪術を行ってしばらく待ってから、エンマが私に張り付かせている侍女を呼び出し、エンマに会いたいと伝えました。


 しかも私がエンマに会いに行きたいという面会願いではなく、ここに来て欲しいという、普通なら絶対に聞き届けられない面会願いです。

 気位の高いエンマは、母親という立場を振り回して私に命令し続けています。


 私の呪術が失敗していたら、怒りの拒絶が言い渡されるでしょう。

 私の呪術が成功していたら、エンマはわざわざこの部屋にまできます。

 そうなれば気分がスッキリすることでしょう!


 ほとんど待たされることなく、急いで準備したのが明らかな様子で、エンマが私の部屋にやってきました。


 呪術は成功したのです、貴重な魔血晶を使った甲斐がります!

 アンドレアが驚きの表情を浮かべています。


 エンマ付きの侍女達は、驚きに加えて屈辱と怒りが混ざった表情をしています。

 さあ、全てを話してもらいますよ!

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