第7話:呪術の罠、闇の影に舞い降りる

 腹立たしい事に、またしても母親からニコーレに会えという命令が来ました。

 御姉様を殺した黒幕に命じられて、実行犯に無理矢理会わせられているのですから、私の怒りは尋常一様ではありません!


 何よりあのような、派手好きで品のない女に近づかれるのは嫌なのです。

 あの目がチカチカする服装も、鼻が曲がりそうなくらい強烈な香水には耐えられないのです。


「ガイア様、呪いの準備をされているとお聞きしましたけれど、本当ですか?」


 とは言っても、復讐のためには情報を集めなければいけません。

 向こうから来てくれるのなら、我慢して会わなければいけません。


「はい、本当ですわ、ニコーレ様。

 記憶が混濁して、私を殺そうとした相手の顔は想いだせないのですけれど、私のドレスや髪についていた、相手の髪の毛は残っておりましたの。

 ですから、その髪の毛を人形に込めて呪いを施そうと思いますの。

 黒幕まで届くかどうかは分かりませんが、実行犯くらいは確かめられ、恨みも晴らすことができると思いますの」


「まあ、それは素晴らしいことでございますね。

 でも間違って屋敷の者の髪の毛が混じっていることはございませんの?

 そう、例えば身嗜みを手伝ってくれる侍女なんかの」


「その心配はございませんわ。

 うちに仕えてくれている侍女は優秀ですから、自分の髪の毛を私のドレスに残したりはしませんもの。

 もちろん屋敷のどこにも自分の髪を残したりはしませんわ」


 ニコーレは自分が間違って疑われているのを恐れているのでしょうか?

 それとも御姉様を殺した一味だから、呪いを受けるのを恐れているのでしょうか?

 エンマや侍女達も、何か後ろ暗いところがあるのでしょうか?


 実際に行うのなら、万全の準備をしなければいけません。

 御姉様に蘇っていただくまでに、エンマと二コーレを殺す事は確定ですが、そのために実行犯と黒幕を取り逃がすわけにはいきません。


 エンマと二コーレが実行犯であり黒幕であるのなら話は簡単です。

 徹底的に痛めつけてから殺してあげます!

 ですがとても残念な事に、御姉様を殺したという確証がありません。


 確証を掴むために呪いを発動させる方法もありますが、確実を期すためには、実行に移すまでにやらなければいけないことが多いのです。


 実行犯を見つけたら、口封じされたりしないように、素早く確保して黒幕の名を吐かさせないといけません。


 相手が強敵である可能性もあります。

 暗殺のプロの場合は、捕まるくらいなら自殺する者さえいるのです。

 圧倒的な力量差で、自殺さえさせないようにしなければいけません。

 

 私は羊皮紙に魔法陣を描き、木版には魔法陣を刻み、血に魔力を込めた魔血晶を創り出し、魔法陣の起点に据えました。


 魔血晶を据えた魔法陣は、魔血晶を据え付けていない魔法陣とは比較にならない強力な魔術を発動してくれます。


 魔血晶魔法陣をある程度確保してから、侍女を通じてエンマと二コーレに呪い人形の話が伝わるように画策しました。


 エンマと二コーレからルディーニ公爵に伝わるでしょう。

 色んなところから入り込んでいる密偵からも、雇い主の所に伝わるでしょう。

 そうなれば、慌てた雇い主や御姉様を殺した実行犯や黒幕が動くはずです!

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