第5話:闇の復讐者

 私は少しずつ公爵邸内に足掛かりを作って行きました。

 公爵家の跡継ぎとして許される権限を全て使って力を蓄えました。


 ただ物は手に入っても、信頼できる人手は公爵家内では確保できませんでした。

 そこでグレタに頼んで外部から人手を集めようとしたのですが……


「グレタ、冒険者は集まりそう?」


「申し訳ありません、侯爵閣下も奥方様も厳しい眼で私を見張っております。

 迂闊に動くことができず、御役に立てません」


「いえ、いいのよ、ずっと誠心誠意仕えてくれたグレタだもの。

 グレタにできないことは誰がやってもできないわ、何か他に方法はないかしら?」


「御嬢様がどのような魔法をお使いになれるかが分かりませんので、私には助言のしようがございません」


 今までは私のことをサーラと呼んでくれていたグレタが、御姉様の身代わりを始めてからは御嬢様と呼ぶようになった。


 地下牢にいた時は、私が自分の名前を覚えられるように、サーラと呼んでくれていたけれど、それが御嬢様に変わった。

 

 だがそれも二人だけの時に限られる。

 他の人間がいる時は、御姉様の名前で呼ばれる。


 ガイアと呼ばれるたびに、胸に鋭い痛みが走る。

 その度に許されない罪を犯している気になる。


 その事をグレタは気が付いてくれているのだろう。

 できるだけ名前を呼ばないようにしてくれている。


 私は時間をかけて、使える魔法を全てグレタに伝えた。

 最初は感心してくれていたグレタだが、途中から唖然としだした。


 内心あきれ返っているのかもしれないけれど、仕方がないじゃない。

 御姉様もグレタも、アンドレアやエンマの眼をかいくぐって会いに来てくれていましたが、私には本当に短過ぎる時間だったのです。


 食事も一日一回最低限の量だけでした。

 地下牢にいられる時間も限られていました。

 二人がいてくれない時間は、本を読むか空想するしかないのです。


 本を手に入れるのが難しかった頃は空想をしていましたが、御姉様の御陰で欲しい本が手に入るようになってからは、魔法を覚えるのに全時間を費やしたのです。


「御嬢様、傀儡魔法で造り出す使い魔は、どれくらい人に近いのでしょうか?」


「使う素材と憑依させるモノによります。

 人の血と精液を培養すれば、人間と同じホムンクルスを造れると魔導書には書いてありましたが、まだ試したことはありません。

 今まで試して成功したの、御姉様がくださった人形に死霊の魂を入れることと、御姉様がくださった鳥の卵を使って使い魔を創り出したことだけです」


「私が人形や小鳥を集めてきたら、同じように使い魔を造り出せますか?」


「実際に試してみなければわからないけれど、やれると思うわ。

 それに別に人形でなくても小鳥でなくてもいいのよ。

 木を適当に組み合わせて人型にしたものでも、卵でもやれるとおもうわ」


「分かりました、できるだけ多く集めてまいります」

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