第4話:邪悪な輝き、闇に囚われた公爵邸
私は生まれて初めて地下牢から地上の公爵邸に上がりました。
グレタが手に入れてくれたおとぎ話のような光景が広がっていました。
魔術で目を保護していなければ、視力を失っていた事でしょう。
荘厳な門と石畳の庭園は訪れる者を圧倒する美しさに包まれています。
その門をくぐれば、壮麗な屋敷がそびえ立っているのです。
豪華な外観は、まるで童話の城を思わせるような建築様式であり、美しい装飾が緻密に施されています。
細工された彫刻や華やかな彩色が、屋敷全体に華やかな輝きを与えています。
屋敷の庭園は、壮大な広がりを持ち、美しい花々が咲き誇っています。
洗練された造園術が用いられ、花壇や噴水、小川などが配置されています。
四季折々の風情を楽しめるように、様々な種類の花や木々が植えられ、美しい景色が広がっています。
屋敷の中は豪華絢爛な装飾品や家具で飾られています。
壁には美しい絵画や豪奢なタペストリーが掛けられ、床には上質な絨毯が敷かれています。
シャンデリアからは輝かしい光が降り注ぎ、部屋全体を優雅な雰囲気で包み込んでいるのです。
広いホールや宴会場は、華やかなパーティーや社交イベントの舞台として利用されるのでしょう。
テーブルには煌びやかな飾り付けが施されています。
ここで上流階級の社交界の華やかな交流が繰り広げられるのでしょう。
御姉様が使っておられた私的な寝室や書斎は、落ち着いた雰囲気が漂っています。
落ち着いた雰囲気の家具や美しい調度品が配置され、貴重な書物や芸術作品が飾られています。
公爵邸は幻想的なパラダイスのような存在であり、その美しさと優雅さは多くの人々を魅了する存在感があります。
私が生まれたからずっと閉じ込められて来た地下牢とは全く違います!
怒りに震える私に母の使者と名乗り者が来ました。
従姉のニコーレに会えと言う身勝手過ぎる命令です!
「ガイア様、心配いたしました、御加減はいかがですか?」
ニコーレが私に探るような視線を送ってきます。
ニコーレが御姉様を殺した犯人かもしれません。
少なくとも容疑者の一人なのは間違いありません。
「御心配していただいてありがとうございます。
あまりに怖かったのか、記憶がなくなってしまっているのです。
もしかしたら、父上の秘術の弊害かもしれません。
仮死状態の人間を治療するような非常識な魔法ですもの」
「まぁ、そのような魔法がございますの?!
わたくし初めて聞きましたわ!」
「本当は秘密なのですけれど、ニコーレ様は私の従姉ですから、打ち明けさせていただきます。
それにわたくしが色々と疑われているのも耳にしております。
身内にだけは真実を話して良いと、父上から言われましたの」
腹立たしい、御姉様を殺したかもしれない相手に、おもねるような話し方をしなければいけないなんて、はらわたが煮えくり返るような怒りを感じます!
ですが、本当の犯人を見つけないといけません。
どうせ殺すのですが、殺すのは全てを話してもらってからです。
「まあ、まあ、まぁ、そうでしたの。
でも叔母様からは何もお聞きしなかったのですが?」
エンマですか、いちおう母という事になっている女ですが、今頃愛人と乳繰り合っているのでしょう、淫乱強欲、冷酷残忍な人非人です。
御姉様や私よりも、兄でありルディーニ公爵家の当主であるジューリオの娘、ニコーレの方を愛した女です。
「母上はわたくしの事はあまり興味がないようですよ。
それにモンタギュー公爵家の事は父上が決められますから」
「そうなのですね」
不服そうな顔をしています、底の知れた女です。
公爵令嬢としては付け焼刃でしかない私にさえ表情を読まれる愚か者です。
もっとも私は自分に魔法をかけて底上げしていますから、比較するのは無理がありますね。
本当はこの女に直接魔法をかけたいのですが、対魔法の装飾品を身に着けているので、迂闊なことはできません。
ニコーレの側近が眼を光らせているので、その眼をかいくぐるのも難しいです。
屋敷に戻った後で襲う方法もありますが、警戒は厳重でしょうね。
正体がばれない方法があればいいのですが……
「ガイア様、そろそろお時間でございます、これ以上は御身体に触ります。
申し訳ありませんがニコーレ様、今回の御見舞いも、奥方様の強い要望で特別に旦那様が許可されたものでございます。
どうかガイア様の御身体に配慮してくださいませ」
グレタがニコーレを脅かしています、私に負担をかけて殺そうとしているのかと!
これ以上時間稼ぎをするようなら、モンタギュー公爵家を乗っ取ろうと、体調の悪い私に負担をかけて殺そうとしたと、社交界に噂を流すと暗に言っているのです。
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