第2話:闇に葬られた令嬢

 御姉様を殺した相手は、モンタギュー公爵家の家督を狙う者の可能性が強いです。

 次にこの男を殺そうとする可能性があります。


 その事はこの男も気が付いていますから、敵を探し出して殺そうとするでしょう。

 ですがその敵は、モンタギュー公爵家の身内である可能性が極めて高いのです。

 

「誰を信じて御姉様の御遺体を焼かせるのですか?

 その者は本当に信頼できるのですか?

 その者は、家中に潜む敵の目を全て掻い潜って成功させられるのですか?

 正室のエンマまで敵に回っている可能性があるのですよ」


「ふん、馬鹿ではないのだな!」


 私が馬鹿でないのを悟られることになっても、御姉様の御遺体は確保しなければいけません。


 御姉様が私のために手に入れてくださった魔導書の中には、蘇生術について書かれた魔導書もあったのです。


 必要な素材が不死鳥の血や竜の肝などという、採集不可能とも思えるモノが多いのが難点ですが、可能性がある以上御姉様の御遺体は絶対に手に入れます!


「御姉様は死んだと思われているのでしょう?

 でもそれは誤解で、仮死状態であったことにするのでしょ?

 それをモンタギュー公爵だけが知る秘術で治癒させたことにするのでしょうが、それはあまりに不自然ですよね?

 多くの者が、特に御姉様の死にかかわった者が、替え玉を使っているのか、蘇生術を使ったのか、禁呪である死霊術を使ったのかを疑うのではありませんか?」


「だったらどうだというのだ?!」


 必死で色々と考えているようですね。

 絶対に焼いて隠蔽するという考えから、私の話を聞いてやろうという考えに変わったようですが、ここが正念場です。

 

「もうすでに、成果を確認するためにも、モンタギュー公爵を陥れるためにも、多くの密偵が屋敷の周囲を嗅ぎまわっていることでしょう。

 御姉様を殺した者は、既に屋敷の中にまで密偵を入れているでしょう。

 いえ、正室のエンマ自身が嗅ぎまわっているのではありませんか?

 御姉様の遺体は、屋敷の外に出すのも危険ですよ」


「だったらこの地下牢で焼いてしまえばよい」


「では仕方ありませんね。

 どうしても御姉様を焼くというのなら、私は自殺します。

 はっきりと言ってやる!

 私はお前が憎い、殺してしまいたいほど憎い!

 だから御姉様を私にくれないのなら、自殺して嫌がらせをしてやる。

 私が自殺もせずに生きていたのは、御姉様がいてくれたからだ。

 御姉様がいない世界で生きていても仕方がない。

 どうするのです、御姉様の御遺体を私に渡して自分の血を残すのか?!

 それとも、エンマの不義の子や一族の子にモンタギュー公爵家を奪われるの?!」


「……よかろう、ガイアの死体はくれてやる!

 だが絶対に誰にも発見させられるな!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る