地下牢の影・姉の復讐:地下牢に閉じ込められた双子の妹は、姉を虐殺され復讐鬼となる。
克全
第1話:闇の抱擁
私がずっとたった独りで閉じ込められてきた地下牢は、忘却の彼方に存在するかのような場所です。
冷たい石の壁が狭い空間を囲み、その表面には、過去閉じ込められていた人たちの悲痛な叫びや絶望の爪痕が刻まれています。
一部の石は剥がれ崩れ落ち、牢獄の腐敗と朽ち果てた空気が漂っています。
地下牢の中に光は存在せず、ただ闇が支配していました。
その闇は生命を奪い、希望を消し去るような強烈な存在でした。
微かな月光やろうそくの明かりも届かず、不気味な黒い闇がすべてを包み込んできました。
絶望的な孤独と静寂が神経を苛みます。
ネズミの足音すら天使の調べに聞こえるくらいの無音の闇が支配する世界です。
希望の光が届かず、生と死の境界が曖昧になる地獄、あまりの絶望に生を手放したくなるような場所なのです。
そのような場所に、父と名乗る腐れ外道が現れたのです!
「今日からお前がガイアだ、いいな、サーラ!」
殺してやりたい!
まるで犬畜生を見るような目で私を見ている男を、殺してやりたい。
まあ、この男にとっては、双子に生まれた私は畜生と同じなのでしょう。
だからこそ、生まれてからずっと地下牢に幽閉できたのでしょう。
それなのに、今更父だと言って私に命令するこの男を殺してしまいたい!
でも、今は我慢するしかない。
御姉様を、ガイアを殺した奴を見つけ出すまでは、こんな男でも利用しなければいけない。
怒りに打ち震え、つい漏れ出してしまう魔力を抑えなければいけない。
僅かでも油断してしまったら、この男を焼き殺してしまいます。
「黙ってないで答えろ、ガイア!」
いやだ、絶対に嫌だ!
あの優しく美しい嫋やかだった御姉様の名を、私のような醜い女が騙るなんて、冒涜以外の何物でもありません!
絶対に嫌なのに、この腐れ外道の言うとおりにしなければいけないなんて!
「わかり、ました、でも、条件があります、御姉様の御遺体を私にください」
「駄目だ、お前が条件を出せる立場だと思っているのか?!
慈悲の心で、畜生腹のお前を地下牢から出してやるのだ!
お前は黙って俺の言う通りにしろ」
嘘です、こいつは私を無学な馬鹿だと思っているようですが、私は御姉様と乳母の御陰で多くの知識を得ているのです。
こいつには御姉様と私しか血を分けた子供がいません。
もし弟や妹が生まれていたら、畜生腹の御姉様や私はとうに殺されていました。
自分の血を分けた子供にモンタギュー公爵家を継がせるためには、私を殺すわけにはいかないはずです。
だから、交渉の余地はあるはずです。
こいつは御姉様の死を隠蔽したいはずです。
密かにどこかに埋めるか捨てるかしたいはずなのです。
私が地下牢暮らしで狂っていると思わせればいいのです。
「御姉様は私のモノ、ただ一人、私を愛してくれた人です。
御姉様を私にください、この地下牢でずっと大切にします。
御姉様の御遺体をどこかに捨てても埋めても、探し出して再生して証拠にする者が出てくるかもしれません。
私にくださったら、この地下牢で大切に守ります!
だから御姉様の御遺体を私にください!」
「駄目だ、それよりは灰になるまで焼いて、畑にまいた方があと腐れがない!」
糞、御姉様を何だと思っているの!
いえ、こいつに取ったら自分の娘も道具でしかないのでした。
まして御姉様と私は畜生腹、死んでしまったらもう何の役にも立たないから、どうでもいいのです。
考えろ、何か考えだすのです!
この男が御姉様の御遺体を私に渡す気になる理由は、なんでもいいのです!
プラスの理由であろうとマイナスの理由であろうと、何でもいいかをひねり出すのです!
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