第4話 遭遇
友人カップルと花火大会へ行くことになった僕は、もう一人女子を誘うことになった。
「女子誘えって言われても、話せる奴なんて…あっ。」
そんな時、解答を導き出してしまった―
毎週火曜日、学校付近の河川敷で会う人物がいる。
今日もまた、その河川敷へ来た。沢木葵に会うため、この場所へ自然と足を運ぶようになった。
砂埃の舞う道を歩いて、川沿いに近づいてみると、ある二人の人影を目撃した。なんだ、カップルか、と僕は少し肩を落とし、夏草の上に腰かけた。
「…悪かったよ。このとおり。」
「謝って欲しいんじゃないの。ごめん、もう帰るから。」
「ちょっと…帰るなよ!」
先程のカップルらしき二人の会話が聞こえてくる。ただでさえ気まずいのに、喧嘩なんて余計に気まずい。
帰ろうとする女性を男性が追いかけた。その轍から香る草原の匂いは、僕の鼻をツンと刺激した。
男の呼び止める声が徐々に近づいてきて、僕の前にある光景が映った。
温かさのある落ち着いた声、透き通る長い黒髪、瑞々しく光を含んだ茶色い瞳-
そう、彼女だ。目の前に現れたのは、沢木葵だった。
険悪な雰囲気を醸し出したカップルらしき人物のうち、女性は沢木葵だったのだ。
どうしたの、と、彼女に声をかけようとしたその
彼氏であろう男が、彼女の腕を強く掴み、反対の手で彼女の頬を叩こうとした。
僕は、いてもたってもいられず、無我夢中でその暴行を止めた。鈍い音が辺りに響く。
痛みが頬に残ったまま、僕は草の上に倒れ込んだ─
しばらく経って、目を覚ますと、殴られて倒れていたと、沢木葵に伝えられた。僕が目を開けるまでずっと傍に居てくれていたらしい。
「…相馬くん!大丈夫?」
「痛え。」
「そ、そうだよね、ホントにごめんね…」
彼女は自分のせいで僕が怪我をしたのだと言うから、僕はそれを否定した後、事情を聞いた。
彼女は涙声で、時々詰まりそうになりながらも話してくれた。
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