第29話 ライリーとティランノス

「守るって……何言ってんだよ」

 ティランノスがじっとりとした目で私を見る。明らかに疑っている目つきだ。

「2人がこんな目に遭ったのは神様のせいじゃない。きっと別の何かのせいだと思うんだ」

「別の何かって、なんだよ」

「それは……例えばこの島を狙ってる誰かとか」

 私は頭をフル回転させる。パゲア島に到着するまで、シャークが遅い掛かって来た。その姉弟達が言っていたはずだ。『ボスに依頼されてパゲア島を探している』と。

「シャークがそんなこと言ってたよ!この島の資源とか、珍しいものを狙ってる悪い人がティランノスのお父さんに何かして、……私のお父さんが行方不明になった」

「地上の人間のせいだってことか?」

「私はそう思ってる」

 ティランノスは私の発言に大きく呆れている。

「神よりも確かな論だと思うけど?」

 私が得意気なのが気に入らないんだろう。ティランノスがぶっきらぼうに言う。

「自然の声も聞こえなくなった奴に言われたくない。お前らは神の恐ろしさを知らないんだ!どうせ技術の進んでいない土地だと思って見下しているんだろう?」

「そんなこと思ってないし!それに気に入らないからって人を殺すような神様なんて信用できないね」

「恐れ多いことを……よくもまあ、そうはっきり言えるもんだ。罰を与えられてもしらねえぞ」

「やれるもんならやってみなよ!」

 私とティランノスは暫く下らない言い合いを続けた。ああ言えばこう言う。らちが明かなかった。息を切らしながらティランノスがそっぽを向く。

「これでよく分かった!地上の奴と俺達では違いすぎる。生き方も考え方も!」

「違うからいいんじゃん」

 私が答えるとティランノスがすかさず反対してきた。

「違うから争いが起こるんだろう?こんな風にな!」

「みんな同じだったらつまらないじゃん!」

 私の答えにティランノスの口が閉じられるのが分かった。

「違ってるから面白いんだよ!争いになっちゃうのは……仲良くする時間が足りなかったからだよ。きっと!」

 まただ。ティランノスは私と出会った時も視線を外す瞬間が多かった。そんなに私の笑顔が変だっただろうか。

「……本当に。そういうところがオズウェルにそっくりだ」

 ああ。そういうことか。

 私は思わず普段の表情に戻ってしまう。ティランノスはずっと、私とお父さんを重ねていたのだ。

 きっとティランノスは今の私のように外の世界に興味を持っていたのだろう。お父さんに憧れを抱いていたはずだ。そのせいでお父さんが死んだと思い込んで苦しんでいる。

 それでも私のことを助けてくれたということは……ティランノスは相当優しい子だということだ。

 だったら尚更なおさら、ティランノスを苦しみから助けてやらねばと思う。私は大股でティランノスに近づくと力強く言い放った。

「この島のこと、教えてよ。そうすればきっとこれから何が起きようとしてるのか分かると思うんだ」

 真剣な表情の私を見て、ティランノスは意地を張るのを止めたらしい。ため息を吐きながらも口を開いた。

「分かった。そうしたら……パゲアの秘密を教えよう」


 


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