第25話 語らい(1)

 館で急遽きゅうきょ、大規模な食事会が開かれることになった。

 館の入り口、大きなドアが開かれ、沢山の人達が出入りする。食べ物を持って帰ったり、その場に座って食べる人がいたり大いに賑わった。

 お祭りみたいで、ワクワクする。私も土の器に入ったスープとパンのようなものを口にした。

 パゲアの料理は山菜、野菜や果物が多い。動物の肉は食べないそうだ。肉だと思ったものも大豆製品であることが分かった。

「おいしい!これは何ですか?あと、これは?」

 私が料理人に話しかけて困らせている所に、パゲアの男性が近くにやって来た。パゲアの男性は誰もが筋肉質で大きく、威圧感が強い。顔に描かれたペイントによって更に迫力が増す。だから思わず緊張した面持ちになってしまう。

「地上の子。君は本当にオズウェルの子なのか?」

 お父さんの名前を聞いて、私は弾かれたように顔を上げた。

「はい!もしかして、ここに来た時のお父さんのこと何か知ってるんですか?」

「ああ。彼がここにいる間、世話をしたのは私だからね」

 私は食べるのを中断して、男の人に向かい合う。

「私はオズウェルの娘で冒険家のライリーです!是非、お話聞かせください」

「私はディノニクだ。よろしく」

 私はディノニクさんと握手を交わす。

「彼は島から流れる『離島流りとうりゅう』を乗り越えてこのパゲアに辿り着いた。運の良い冒険家だったよ。クジラの背に船を乗せて来たんだから驚いた!あの潮の流れは特別大きなクジラの群れしか乗り越えられないからな。

なんでもクジラが沈んだ瞬間を狙って乗ったそうだ。得意そうに私達に話してたよ」

「やっぱり……島から遠ざけるような潮の流れが発生していたんですね。いち早くクジラに目をつけるなんて、やっぱりお父さんはすごい」

 相変わらずお父さんの判断力と大胆な行動には驚かされる。自慢げに話すお父さんの姿が簡単に想像できた。

「彼はパゲア島の色んなことを調べて飛び回っていたよ。色々聞かれて疲れたな」

「へえ~。そうなんですね」

 今の私と同じようなことをしていたのを知って、少し気恥ずかしくなって視線を落とす。

「彼はパゲアのことを理解した上で島のことをおおやけにはしないと約束してくれた。地上の者にまだああいう人物がいたとは。感動もしたし驚いたよ。次は娘と一緒に来ると言っていたけどな……」

 私はため息を吐くと、素直に現状を伝えた。

「お父さんなんですけど……パゲア島に行った後、行方不明になってしまったんです。私はパゲア島を冒険しに来ただけじゃなくてお父さんを探しに来たんです!」

「行方不明だって?」

 ディノニクさんの表情が変わる。ヴェロさんも深刻な表情を浮かべていた。

「実は……。7年前、オズウェルが島を去った後。先代の祭祀長が亡くなったのです。祈りの洞窟の泉の中で。地上の者と友好的にしたから島の神……クロノサ神の怒りに触れたのではと言われています」

「先代の祭祀長って……。ティランノスのお父さん、ってことですか?」

 私の問いかけにヴェロさんが難しい顔で頷いた。

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