第24話 友好関係は食から
「祭祀長様!大変です!地上の者が館から逃げて……!」
島の内部に戻ると、男の人がティランノスの元に走って来た。
「ああ。その不届き者ならもう、捕まえたから安心しなさい」
そう言って体をずらして後ろにいた私の姿を見せる。私は頭を
相変わらず島の人達の視線は鋭いものだったけれど、理由が分かれば怖くなかった。かと言ってどうすればいいかも分からないけど……。この島にいる間に仲良くなりたいと思う。ちゃんとパゲアに住んでいる人の話をこの耳で聞きたいから。
木の館に戻ると、館で働くパゲアの人達が一斉に膝をつき、頭を下げてティランノスを出迎えた。その中にヴェロさんもいて、小走りで私の元に駆けてくる。
「ライリー様!お部屋にいなくて驚きました。一体どうやって……」
「ごめんなさい!やっぱりパゲア島を見て回りたくなって。窓から木の壁を
「木の壁を……?」
頭を下げる私にヴェロさんは言葉を止める。その後でくすくすと笑い始めた。
「本当に。あの冒険家のお方とそっくりですね。祭祀長様」
「……私はもう休む。侵入者の警備を厳重にしておけ」
ティランノスは
あの冒険家というのはお父さんのことだろう。ティランノスはお父さんのことになると態度が変わる。何故だか分からないけど……。そのせいでティランノスからお父さんのことを聞きだすのは難しいと判断した。だから、島の誰かにお父さんのことを聞かなければならないんだけど、それも今の状況では難しそうだ。
ヴェロさんに向かって一歩足を踏み出すと、何かを察したのだろう。右手を前に出して、笑顔を崩さずに言った。
「ライリー様、まずはお食事にしましょう。もうお部屋にお持ちしておりますので……」
「……はい」
勝手な行動をした後だったので、ここは素直に返事をする。
「すごい!ご馳走」
私は手を合わせて興奮した声を上げた。土でできた器の上に盛られた食べ物に目移りする。
私の知っている料理に似ている物もあれば、見たことのない果物もあった。それにりも、こんな豪華で貴重な食事を一人で食べるなんてもったいないな……。だったらこうすればいいんじゃない?
「そうだ!島の人達を呼んで皆で食べるのはどうですか?」
「はい?」
私の言葉にヴェロさんが目を丸くさせる。
「せっかくのご馳走だし、良かったら館の中で働いている人も。ヴェロさんも食べましょう!それにティランノス……祭祀長も!」
お父さんもよく、冒険先の人達とご飯を食べたと話していた。それはもう楽しそうに。
「貴方はパゲアの者達に快く思われていない……。それは分かっていますね?貴方が嫌な思いをするかもしれない。それでも他のパゲアの者を呼びますか?」
「はい!私はもっと、みなさんのことを知りたいんです!」
笑顔で答えると、ヴェロさんは考える素振りをみせながらも頷いてくれた。
「では。そのようにしましょう」
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