第19話 木の館
巨大な木の内部には沢山の部屋があった。
「いいか。お前の自由な行動は許可しない。島を歩き回るのは禁止、島の者と話すのも禁止だ」
木の館を見渡しているところに、ティランノスは冷たく言い放つ。
「え?それは……困るよ。私は冒険家。パゲア島の調査をしたいのに!」
「冒険家ごっこはお
そう言って館を出て行こうとする。
「ちょっと待って!ティランノスはどこに行くの?」
「……気安く名前を呼ぶな。私は祭祀長だ。……
スクールの生徒から大人の物言いに戻る。私は「冒険ごっこ」という言葉が聞き捨てならず、思わず言い返した。
「冒険ごっこなんかじゃない!私は7年間、この日の為に真剣に勉強してきた!命懸けでパゲア島を目指したんだから!」
館にいる人達が一斉に私を見た。私の気迫にひるむことなく、ティランノスは背を向ける。
後を追おうと扉に駆けて行こうとしたら、後ろから誰かに腕を掴まれて動きを止められた。
「お待ちください地上のお方……。ライリー様」
穏やかな声がして、私の足が止まる。振り返ると小柄な女性が立っていた。私と目が合うとにっこりと微笑む。彼女の顔にもペイントが
「私、この度ライリー様のお世話を任されました。ヴェロと申します。そう、先を急がず。まずはお部屋でお休みになられては如何でしょうか?」
ヴェロの言葉に私は冷静さを取り戻す。上陸するまでにかなり体力を使ったんだ。今だってパゲア島の人達に
『外から見知らぬ人間が来るんだ。誰だって不安になるさ。「分からない」ものほど恐ろしいことはないからな!』
お父さんの言葉を思い出す。そうだ……パゲア島の人達は外から来た私のことが怖いんだ。今だって、奇妙なものでも見るように大声を出した私を見ている。私が何者なのか分からないから恐れているのだ。
私は分からないことを知りたいと思って「楽しい」って思うけど「怖い」と思う人もいる。
「大きい声をだして申し訳ありません。休ませて頂いてもよろしいでしょうか?」
私はしょぼくれながら謝ると、ヴェロさんは微笑んで腕を掴む力を弱めてくれた。
「ええ。勿論でございます」
そう言って館の壁、木の幹に手をかざすと太い枝が現れて私達の足元に降り立った。人が三人ぐらい乗っかれそうな太くてしっかりとした枝だ。
私が物珍しそうに眺めていると、ヴェロさんが軽い身のこなしで枝の上に飛び乗る。
「さあ、こちらへ。お部屋へ案内いたします」
「わあ~すごい、すごい!高い!」
枝に乗った私ははしゃいだ声を上げた。
「このまま4階のお部屋にご案内します」
「へえ……。階段がないからどうやって上に上がるのかと思ったら木の枝なんですね!やっぱりパゲア島の人達は魔法が使えるんだ!」
私が興奮気味にヴェロさんを見上げると、にこやかに頷く。
「魔法ではないんです。……詳しくはお部屋に辿り着いたらお話ししましょう」
「え?教えてくれるんですか?やったあ!」
私はその場で飛び跳ねたくなる気持ちを抑えた。枝から落ちたら大変だ。
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