第11話 海賊姉弟

「多分、パゲア島に向かう船を狙う海賊集団『シャーク』だろうな。最近活動を聞いてなかったのに……」

 ユジさんも額に汗を浮かべている。

「まさか本当にシャークがいるなんて……」

 私は緊張で体を強張らせた。海賊対策用に眩しい光りや煙を発生させる道具は備えているものの人を傷つける武器なんて持ち合わせていない。使いたくもなかった。

 一番恐れているのは高性能の小型船を奪われることだ。船かから大海原に放り出されたらと思うとゾッとする。

 どうしよう。逃げるための退路は塞がれた。

 こうなったら……話し合いでどうにかするしかない。私はアンカーを引き上げ、三方を囲むようにして近づいて来た船を迎える。

 お父さんは冒険の時、武器なんて持ってなかった。

 笑いながら『そりゃあ突然外から見知らぬ人が来れば怖いわな。武器を向ける気持ちもわかる。だから、友達になってやろうという気持ちで相手と向き合わなきゃならん』と言っていた。

「見つけた!白と黒の小型船……オズウェル号だよ!」

 黒い口紅が目を引くショートカットの女が声を張り上げる。水上バイクにまたがり、片手には銃を手にしているのが見えた。左腕にはさめの入れずみがでかでかと描かれている。

「アンヌ姉ちゃん、子供が乗ってるぜ!標的を間違えたんじゃないか?」

 後ろから近づいて来た水上バイクにはガタイの良い男が控える。やはりその男にも同様の入れ墨と銃が握られていた。

「そうだぞ。姉さん、そっちの船も弱々しい男しか乗ってない!」

 大きな船の船首から顔を覗かせたのは顔の右側に切り傷のある、がっしりとした体格の男だ。その男の腕にもお揃いの入れ墨が見える。

「オル、ハイレ少し黙ってな!間違ってなんかないさ!こいつが依頼主の言ってた小型船だよ!」

 アンヌと呼ばれた女の声が海に轟く。

「さあ、大人しく私達をパゲア島へ先導してもらおうか?偉大な冒険家のお嬢さん」

 そう言ってアンヌは私に銃口を向け、にやりと笑った。

 私とユジさんは両手を挙げて、息を呑んだ。何故か海賊のアンヌは私のことを知っていた。しかも私に狙いを定めていたようだ。

「僕らは冒険家だ!商船ならまだ分かるが……金目のものなんてないぞ!」

 ユジさんの力強い言葉にも女は動じない。

「今回は事情が違うのさ。パゲア島に辿り着いたら多額の報酬がもらえるって依頼を受けたんだ。私らの船には発信機がついてるからね!……と言ってもパゲア島は電子機器の類が使えなくなるらしいから直近の位置データにはなるだろうけど」

 私は言葉を失った。ということは……私はこれから背中に銃口を突き付けられながら船を先導しなければならないってこと?

「おしゃべりはこれぐらいにして。案内してもらおうか?希望の島に」



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