第2話 目指すはパゲア島

 みなとから離れて、暫くすると私はこれから目指す島に思いを馳せる。

 私が目指しているのは『パゲア島』と呼ばれる島だ。その島は「幻の島」とか「希望の島」とか「呪いの島」とか……色んな呼び名で呼ばれている。

 それは今だに全容の知れない不思議な島だからだ。インターネット上にパゲア島内の画像は殆どない。何故なら、パゲア島に近づくと電子機器が使えなくなるからだ。そのせいでパゲア島の情報は文章か絵でしか残されていない。

 神出鬼没な島なので上陸できないことが多く、パゲア島のことを知る人も少なかった。情報が少ないせいで嘘か本当か分からないことまでインターネット上に飛び交っている。

 巨大なタコが住んでいるとか、人食いの人間が住んでるとか、島に向かった者は呪われて帰ってこれないのだとか……。

 そんな噂が盛りだくさんの島に私のお父さんは冒険に出た。この船に乗って。

 お父さんは冒険家だからそういう危険な場所に旅立つのは普通のことだった。家に帰って来るのは家族の誕生日と結婚記念日の時だけ。近所のおばさんが「父親失格ね」なんて言っていたけど私は最高にカッコイイと思う。

 お父さんが帰って来るのは当たり前のことだと私は思っていた。いつも見たことのない大量のお土産を持ち帰って、嘘か本当か分からない冒険譚を聞かせてくれる。

 お父さんの話は読み聞かせの物語よりも数千倍も面白いんだ。私が冒険家に憧れるのは時間の問題だった。

 でも今回帰って来たのは船と手記と……私が今首に掛けているネックレスだけだった。船に人は乗っていなかったのだ。そのせいで余計に「呪いの島」というイメージがパゲア島に定着してしまった。

 空っぽのひつぎを前に泣く家族を見て私だけは泣かなかった。泣けなかった。

 もしかするとお父さんは密かにどこかで旅を続けているかもしれない。そう考えたからだ。

 だったら私が冒険家になって探しだそう。

 5歳の時、私はお母さんに宣言した。「私は冒険家になる!」って。勿論、猛反対された。

 「お父さんみたいに危ないことはやめて、普通に生きなさい」そう、お母さんに言われた時のショックは計り知れない。

 親は子供の夢を応援するものだと思っていたけど違ったみたい。だけど私はそこで諦めなかった。お母さんは私がどうしようもない負けず嫌いだってこと知らなかったみたいね。

「私、絶対冒険家になるから!」

 お父さんから受け継いだ冒険魂が燃え上がる。5歳の時、そう決意してから7年。私は来るべき今日に備えて猛勉強し、体を鍛えてきた。

 それに偉大なる冒険家オズウェルの指令でもある。その指令は船に残されていた手記の背表紙に走り書きでこんな風に書かれていた。


『この旅の続きは我が娘、十二歳の誕生を迎えたライリーと共に。だから十二歳の誕生日プレゼントはこのネックレスにしよう!』

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る