エピクロス派
一部を引用します。
したがって、快楽が目的であると私たちが語る場合、私たちは、たとえば私たちの説を知らない人々とか、同意しない人々、あるいは受け取り方を間違っている人々などが考えているような意味での、放蕩者の快楽、つまり享楽的な快楽を、意味しているわけではない。むしろ私たちは、身体にあっては苦痛なく、魂においては煩いのないことを、意味しているのだ。というのも、快適な生活を生みだすものは、ひっきりなしに酒を飲んで騒ぐことでもなければ、また美少年や女たちと楽しんだり、魚肉その他贅を尽くした食卓が許すかぎりのものを味わったりすることではない。むしろそれは目覚めた知性の思考――つまり、いっさいの選択・回避の依存している根本を探究し、同時に、魂を最大の動揺につきおとす迷妄を追放してくれる、そういう目覚めた知性の思考なのであるから。
解説です。
エピクロス(B.C.341~B.C.271年)は、いわゆるエピクロス学派の祖となった哲学者。サモス島に生まれたらしい。デモクリトスの影響を受け、諸学派の研究にも熱心であった。ヘレニズム期に入って、哲学は一般的に幸福を獲得するための手段と考えられるようになった。これは、ストア派も同じであった。
エピクロスの場合には、エピキュリアン(快楽主義者)として、しばしば誤った批判を受けたが、この資料にも言うように、放蕩者とは無縁の快楽である。彼の言う快楽は、心の平静にある。心の平静を乱す死の恐怖に対して、死は人間にとって何でもない、神々への恐れに対しては、神々を正しく理解することであると、説く。
彼の一派は「庭園の哲学者たち」と呼ばれ、隠れて生き、公的な生活・政治を拒否した。
こうした倫理学を中心とした哲学が、ヘレニズム以後ローマの主流となった。
ローマの主流とは? 次回からいよいよ古代ローマです。
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