23.静かな毒
「ダークネス・フローム・フォレスト2」のストーリーをクリアした。
ゲームの中でクリスは予定通り迎えが来てミナリィエに戻り、元のパーティメンバーとともに魔王城に乗り込んで、人間を滅ぼすという考えを貫く魔王を倒す。
人間と共存を願う穏健派から新しい王が選ばれ、長きにわたる人と魔族の戦いは終結したのであった。めでたしめでたし。って感じ。
うん、途中の地球パート、いらねぇな。
と、何も知らない俺なら言うだろう。
ゲーム内で地球への干渉について触れたシーンがあって、そこで、地球の人達にどうにかこちらの現状を届けなければと大勢が祈りをささげていた。あれが形になってこのゲームがうまれたのだというメッセージだったんだろう。
けど、それがまさか現実のことなんて誰が考えるだろう。
俺はたまたま関わったから気づけたにすぎない。
って、もしかして、地球の協力者、つまり俺にさえ届けばいいって発想だったり?
その辺りはクリスに尋ねても判らないだろうな。もう終わったことだし言及するのはやめとこう。
あとは魔族の干渉の話もあったな。
魔族は異世界転移という方法は取らなかった。あまりにも地球人と容姿が違うからだ。なので強い干渉力でミナリィエの人達が地球に向けてメッセージを発するのを邪魔したり、地球の情報を削除したりというのを仕掛けていたとか。それがどの程度効力を発しているのかまでは確かめるすべはなかったそうだ。
ん? じゃあやっぱりこっちの「ダークネス・フローム・フォレスト2」の情報がないのって魔族の干渉なのかな。
俺は改めて「ダークネス・フローム・フォレスト2」について検索してみた。
……普通に出てきた。のきなみ「地球パート大きな蛇足」って評価で。思わず「やっぱり」とつぶやいた。
爆弾を消去したことで干渉力が薄まったのか、爆弾を消去されたからもう干渉する必要がなくなったと判断されたのか。
「明くーん、あれ? どうしたんですか? ちょっと真剣な顔で」
「ゲーム、クリアした。やっぱおまえ明日帰ることになりそうだな」
「えー。せっかく爆弾処理できたんですからもうちょっとこちらの世界を堪能したいです」
ぶーたれんな。
「こっちの問題は解決したけど、ミナリィエで魔王倒さないと、だろ?」
クリスは、うっ、と言って目をそらした。
「現実から目そらせんなよ。――そういえばさ」
俺はさっき考えついたことと、ゲームに関する情報が見られるようになったことをクリスに伝えた。
「おそらく、明くんの考えでほぼあっているのではないでしょうか。証拠などはないのですが、そう思えます」
でも冷静になって考えてみたらめちゃ怖いな。
自分達の知らないところで自分達の生活を脅かすあれこれが動いてて、それが異世界からの干渉で。
気づかないままだったら、今、この一帯は吹き飛んでるんだよな。
静かに流れ続けてきた毒が気づかないうちに蔓延して、一気に効果を発揮するようなもんだ。
今こうして普通に生活できることに、ちょっと感謝した。
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