イベント達成お役御免だけど
この日は大学に行かずに、ネットでまた変な動きがないかチェックしていた。
けれど心配は杞憂に終わりそうだ。あれからこっちの正体を探る動きはない。
早くあの撮影、配信されないかななんて声もあるし、それっぽい動画を簡単に作ってみるか。後日動画を配信、と言っておいて何もなかったらまたそれを疑うコメントとかで騒動になると困るし。
さて、無事爆弾を消滅させたわけだし、クリスがこちらにいる理由がなくなったわけだが。
「おまえ、いつどうやってミナリィエに帰るんだ?」
「こちらから異世界転移の術はさすがに使えません。あれは複数人で魔法陣を描いて魔力を集めてやる術ですから」
ってことは?
「迎えが来るまで待つしかないですね」
「どれぐらいで来るんだよ」
「多分、地球が無事だと確認してから術の準備をするので二日ぐらいでしょうか」
なるほど。クリスがすぐに帰った後にまた何かあると困るしな。
あぁ、そうだ。
もしも「ダークネス・フローム・フォレスト2」とこの出来事が同じなら、どうなるのかを見てみるのもいいかもな。もう爆弾の処理の仕方とその後の情報操作のことも判ってるんだし、そこまでなら簡単に進められるだろう。
「……帰りたくないなぁ」
ぼそり、と聞こえた声。
帰らないといけないだろう。ゲームやってみて判ったけど、クリスは神官戦士として結構高い地位にいるし、まだ魔族との戦いも残ってるだろうし。
俺はあえて聞こえないふりをした。
ゲームを進めてみて、あぁこれも選択肢で結果が変わってたのか、ってところがたくさんあって、正しい選択ができていてよかったなぁと冷や汗が流れる場面がいくつかあった。
駅に俺がついて行かないとクリスの術が失敗してしまって大爆発というパターンもあって、咄嗟に体が動いた自分を褒めたくなる。
一番驚いたのは、大学の友人にクリスの事を聞かれた時に「実は異世界から来たんだぞ」って冗談で答える選択肢もあったんだけど、そうすると爆弾消去の後の情報操作パートで「彼女は異世界から来た人らしいぞ」って書き込みがあって世間に信じられちゃって、俺も特定されて大炎上、バッドエンドってのがあった。
こわっ! 変なこと言わなくてよかった。
あと、クリスの呪文でなんて言ってるのかとか裏ネタ的に判るのが面白いな。
情報操作の呪文なんて、こっちがまやかしだろうと思わず画面にツッコミを入れた。
で、クリスの予想通り事件解決から二日後に迎えがくる。
明日の夜はちょうど近所の商店街でお祭があるし、向こうに帰る前の楽しみ、ってことで連れてってやろっかな。
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