11.飴色
家に帰ってすぐシャワーを浴びた。風邪ひいたらクリスがつきっきりとかうるさくて仕方ないからな。
台所に行くとクリスと母が並んで立って、楽しそうに料理をしている。
「それじゃクリスちゃん、タマネギを飴色になるまで炒めててね」
どうやら母はクリスに鍋を任せて他の具材を切りたいらしい。
母がまな板の方に向かうと、クリスは振り返って俺を見た。
「あ、明くん。待っててくださいね。愛情たっぷりのカレーライスをごちそうしますから」
けれど言葉ほどに自信はなさそうな顔だ。
いつも自己肯定感高いクリスにしては珍しい。
料理が初めてでうまくいくかどうかちょっと心配してるのかな。
だとしても、さすがに母がそばにいるならひどい失敗はしないだろう。
俺は「おう」と短い返事をして自室に引っ込んだ。
カレーは
にぎやかしな母だが料理はうまいからな。
「明くん、ちょっと聞きたいのですが」
夕食の後にクリスが部屋にやってきた。
「なんだよ?」
「飴色、って、どんな色ですか?」
そりゃ飴色って言ったら飴色だろう。けど改めて問われると口で説明するのは難しいな。
だからネットの画像で見せた。
「べっこう飴が由来みたいだな」
「なるほど。地球で飴といえばカラフルだという知識でしたので、タマネギを炒めたらあんな色になるのかとちょっと不思議に思ってたのです」
タマネギがピンクとか赤とか緑とかになったら、嫌だなぁ。
俺は笑ったけれど、クリスはモニターをじっと見ている。
べっこう飴がどうしたんだろう? 食べたいとか?
「この色……、何か、思い出しそうです」
クリスが画面を睨みつけるように見つめながら考え込んでいる。
「あ、判りました。門番です」
「は?」
「魔王城の門番の武器が、刀身が、こんな色だったんです」
……いや、それを思い出したって世界の危機には関係ないだろう。
「あいつが、言ってました。この世界とつながっている異世界に……」
えっ? それって
いよいよ世界の危機の正体が思い出されるのか?
俺は固唾をのんでクリスを見つめて続きの言葉を待った。
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