第24話 昔お化け屋敷で失神したことが若干のトラウマ
私たちは幽霊屋敷に足を踏み入れる。
玄関を入ってすぐは広めのエントランスホールになっていた。
ホールの真ん中には巨大なテーブル。
何かの集まりに使っていたのだろうか?
しかし、今は誰も使う人がいない。
そのさらに奥には2階へ続く階段。
あとはホールから別の部屋に入る扉が合計で5つ見えた。
「おーっ、これは思ったより本格的なお屋敷だね」
「ててていうか暗くない!?」
「明かりがないしね~。あと窓が蔦で塞がってるっぽい?」
ななっなんて迷惑な蔦なの!?
「ちょっと外行って燃やしてきます!」
「お屋敷に燃え移っちゃうからダメだよー!」
ナディアちゃんに羽交い締めにされる。
「うぅ……絶対に離れないでくださいね?」
「うん。分かったー」
私は体を縮こまらせ、できる限り彼女の背中に隠れる。
「もしかしてお化け苦手なの?」
コクコクコクと高速で頷く。
「あははっ、カナデさんにも弱点ってあったんだ」
「……弱点だらけですよ、私」
「え~~あんなに強いのに?」
ナディアちゃんは笑って小首を傾げる。
「そう言われても怖いものは怖いんです~」
「そっかー」
彼女は頷くと、私の手をキュッと握る。
「それじゃ今日はあたしがカナデさんに頼られる番だね」
「ふえっ……?」
「安心して。ユーレイからはあたしがちゃんと守ってあげるから」
「ナディアちゃん……!」
年下なのになんて頼もしいんだろう!
「じゃっ! 早速1階の部屋から回ってみよー!」
「へ?」
「出発しんこー!」
ナディアちゃんは私の手を引き、時計回りに1階の各部屋を見て回ろうとする。
「あっ! あっ! 待ってそんな早歩きで……あっそんな扉を思いっきり!? 待ってお願い心の準備をさせっ……!?」
まず最初に彼女が飛び込んだのは東側の食堂だった。
「ナッナッナディアちゃん!? せめて扉はゆっくり開けよう!?」
「あっ、ごめーん」
てへぺろとナディアちゃんは謝る。
かわいい……けど、私を守るという話はどこに!?
ま、まあ幸いここには何もなかったみたいだけど。
「食堂もおっきーね」
軽く10人は座れそうな食卓と椅子を見ながら彼女は感想を漏らす。
「ですね……よっぽどの大家族だったんでしょうか?」
ここに以前誰が住んでいたのか、不動産屋さんも知らないらしい。
単に書類が紛失したのか……。
それとも何らかの理由で消されたか……。
どちらにせよ大勢の人がここにいて、今は皆消えちゃった……ってことだよね。
「どうしたのカナデさん?」
「ううん! なっ何でもないですよ?」
うぅ……怖い想像しちゃった。
これ以上余計なこと考えるのやめよう。
いちおう食堂奥のキッチンも覗くけど、こちらも埃が堆積して蜘蛛の巣が張っている以外、特に異状は……。
ガタガタガタガタガシャッガッシャーン
「キャアアアアーーーーーー!」
何なにナニ何々なんっ何なのー!?
「く、苦しい……」
「……あっ! ごごごめんなさい」
反射的にナディアちゃんに抱きついていた私は慌てて腕の力を緩める。
緩めるだけで離さない。
だって怖いし。
けどそれから物音がすることはなくて、少しずつ私も落ち着きを取り戻してきた。
「何だったんだろうね?」
ナディアちゃんはキッチンをキョロキョロして、ある一点で目を留める。
私もそこを見ると、戸棚がひとつ開いていた。
その真下の床には大量の包丁。
「何かの拍子に棚が開いて包丁が落ちてきたみたいだね」
「な……なーんだ」
ホッとため息。
「まあ、あれはあとで片づけるとして、次の部屋行こっか」
「お願いだから今度はゆっくりね」
「はーい」
私はまたナディアちゃんにひっついて移動を開始する。
でも……あれ?
戸棚が開いたのは偶然でいいとして。
何でこの家……あんなに大量の包丁が閉まってあったんだろう?
「……」
うん、やめよう。
ホント。無理だから。実際。
正直さっきのドッキリイベントでメンタル限界だし。
きっと前の家主さんが包丁マニアだったんだよ。
それでいいじゃない。
うん。いい。私がそう決めた。
私がそうやって自分に言い聞かせている内に、1階の残りの部屋の探索もいつの間にか終わっていた。
「残りはお風呂とトイレと書架と空き部屋だったね。空き部屋は物置だったっぽいけど」
「そそそっかー! ならもう帰ろ? ね?」
「えー、まだ何にも分かってないよー。それに2階と3階まだ調べてないし」
「ももももういいんじゃないかな!?」
「ダメだよー。依頼は最後までやらないと」
「そんなウキウキした顔で言わないで~!」
ナディアちゃん絶対遊園地のお化け屋敷で爆笑するタイプだよー!
「ほらほら、早く2階行こ。大丈夫、あたしが守ってあげるからー」
さっきはあんなに頼もしかった言葉が逆の意味に聞こえるよ!?
「カナデさん、行くよー」
「やあぁだあぁぁぁあぁぁ……!」
私はナディアちゃんに引きずられるようにして、2階へ上がる階段をのぼった。
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