第6話 彼女
「お母さん?!何やってるの?!」
「凛、ごめんなさいね…私もう、疲れちゃった。」
「待って!お母さん!だめ!行っちゃだめ!私頑張るから!お母さんの役に立てる様に頑張るから!だからお願い!行かないで!」―――
早朝
「行かないで!」
「おねーちゃん!どうしたの?大丈夫?」
「え、あ~…おはよう桜、ちょっと怖い夢見て…もう大丈夫だよ!桜、すぐご飯作るから待っててね!」
―――――
朝 通学路
「おはよ〜奏〜」
「おはよう、凛。」
「奏、早速で悪いんだけど…」そわそわ
「?」
「…ぎゅーって、してくれないかな…」
「うん、もちろんいいよ。」ぎゅ〜
「あ~落ち着く〜…ありがと、私なんかのこんなお願い聞いてくれて…」
「私なんか、じゃないよ。私は凛の事、好きだから。不安になったらいつでも言ってね、いつでもしてあげるから。」
「うん、ありがと…じゃあ、行こっか!」
「うん、凛。」ニコッ
「あっ、そういえば、私達が付き合ったって事、学校の人達に話すの?」
「どうしよう、私は別に良いけど…凛は友達とか多いでしょ?だから私達が付き合ってるって事みんなに話したら、引かれるんじゃないかな…ほら、私達女同士だし…」
「大丈夫だよ〜私は奏さえ居れば他には何も要らないし。」
「そっか…でもやっぱり話さない方が良いよ。他の人に茶化されたり、いじめられたりしたら…私も凛も傷つくし。」
「確かにそうだね!じゃあ二人の秘密にしとこっか!」
「そうだね、二人だけの、秘密。」
―――――
学校 昼休み 空き教室
ぎゅ~
「ごめんね、何回も我儘言っちゃって…」
「謝らないの、私も好きでやってるんだし。」
「うん、ありがとう。ちょっと不安で…ずっと一緒に居ないと、私を置いて何処か遠い所に行っちゃう気がして…」
「大丈夫、私はどこにも行かないよ、ずっと凛の側にいるから。」
「奏…ありがとう、じゃあ教室に戻ろっか!」
―――――
放課後 教室
「凛さん、少し相談したい事があるんだけど、来てくれない?」
「テニス部の子?良いよ〜何の話?」
「あんまり人に聞かれたくないから、空き教室に行こ。」
―――――
空き教室
「それで、何の話?」
「これ、何だか分かる?」
「?!それ、何で…」
「見ちゃったんだよね〜昼休み、凛と隣のクラスの子が抱き合ってる所。それで、撮っちゃった。写真。」
「…あ…え…あ…」
「あは〜うろたえてる〜今からこの写真を〜クラスLINEに~アップしちゃいま〜す。」
「待って!お願い!やめて!」
「あっ、ごめんね〜もうアップしちゃった〜」
「あ…何で…こんな…事…」
「何でって、アンタが嫌いだからかな〜明日から、クラスの子達に白い目で見られるね〜じゃ、ばいば~い。」あはっ
「そ…んな…」
―――――
校門前 雨
ザー
「凛、遅いな。LINEの返事も既読付かないし、何かトラブルでもあったのかな…」
「奏…ごめん…」
「うわっ、って凛?!どうしたの?!傘差さないで?!何があったの?!」
「クラスの子達に…私達が付き合ってるって事…バレちゃった…」
「それくらい大丈夫だよ!それより、傘入って!風引いちゃうよ!」
「ごめん…奏…ごめん…」
「あ~も~!もしもし!メイドさん!学校の前に車持ってきて!なるべく早く!」
―――――
奏の家
「すぐにお風呂の準備をしてまいります。」
「お願い、メイドさん。」
「ごめん…奏…ごめん…」
「凛!私は気にしてないって!」
「でも…私…秘密って…二人だけの秘密って…そんなことも守れない…私が…私なんかが…奏と付き合う資格なんて…」
「そんな事無い!」チュッ
「私は凛の事が好き!凛も私の事が好き!両想いなんだよ!だから…そんな事…言わないで!」
「奏…うん…ごめんなさい…」
「大丈夫。」ぎゅ
「ありがとう…奏。」
「お風呂の準備が整いました。」
「ほら、お風呂の準備出来たって!一緒に入ろ!凛。」
「…うん。」
―――――
夜
「すっかり遅くなっちゃったね。」
「そうだね、奏。」
「あ!そうだ!桜ちゃんは!」
「そうだった!忘れてた…早く帰らないと…でも…今は奏と離れたくない…」
「うん、分かった。メイドさん、桜ちゃんとついでに二人分の着替持ってきて。」
「かしこまりました。」
「凛、今日は泊まっていいよ。」
「本当…いいの?」
「うん、桜ちゃんも連れて来るから。」
「ありがとう、奏。」
―――――
《テニス部の子》
凛が練習試合の助っ人に入った時、風邪を引いて休んでいた子。テニス部のエースでもあり、自分のバディでもある子が好きだったが、助っ人に入った凛に恋をしたと気づき凛を恨む様に。ある日、偶然空き教室で抱き合ってる凛と奏を目撃し、これは恨みを晴らすチャンスだと思い、現場を撮影した。
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