第5話 西瓜村の儀式
蒼は目の前で粉々になったスイカを見ていた。
次は、自分だと言われた。
つまり・・・
蒼の頭に、
あのクレーンの金属製の丸棒が振り下ろされるという事だ。
当たれば、先程のスイカと同じ運命を辿る事になるだろう。
「や、やめろっ!」
何とか逃げようと暴れるが、やはりビクともしない。
『じゃあ、蒼クンの番だよ?悪いねー。』
全く悪く思っていない口調で男が呟く。
蒼の目の前に、
あのスイカ割りクレーンが設置された!
絶体絶命だ!
「大玉入りまーす!!!!」
唐突に、部下らしきスイカシーツ男達が声を上げた。
影から、
蒼と同様に椅子にくくり付けられた姿の九郎が現れた。
親友の九郎もスイカシーツ男達に束縛されたらしい。
そして・・・
目を瞑ったままの九郎は、
スイカ割りクレーンの先端の「落下地点」に設置された。
『蒼クンには、クレーンのスイッチを押して欲しいんだ。協力してくれるね?』
ボス的な男はとんでもないことを言い出した!
スイッチを押すという事は、
九郎の頭にクレーンを振り下ろす!
という事だ・・・
自分がスイカ割りクレーンの餌食になるのはまっぴらだが、
親友の頭にクレーンを落とすなんて、とんでもない!
「そんな事、出来るわけないだろ!」
蒼は誰しもが考える当然の言葉を声に出した。
『いや・・やってくれ・・・。』
予想外の場所から言葉が出た。
目の前の九郎が呟いたのだった!
『これは西瓜村には必要な事なんだ。
毎年二十歳の村民がスイカ割りの儀式に「使用」される。
今年は俺がそうなんだ。』
蒼は、九郎の発した言葉の内容に混乱した。
二十歳の村民が犠牲になる?
それを九郎が既に受け入れている!?
常識では考えられない事が起きていた。
しかも、
その儀式のスイッチを蒼が押さなければならない・・・。
「な、何を言っているんだ!出来るわけないだろ!」
蒼の言うことは当然だ。
親友の命を奪うことなんてあり得ない。
『おやおやおや?これは困りましたねぇ~。』
全く困っていない口調で男が呟いた。
『じゃあ、蒼クンがやる気を出してくれるように、こんな余興は如何かな?』
そう言うと、
部下のスイカシーツ男達が影から何かを運び出してきた。
それは・・・
古いブラウン管のテレビだった。
現代では薄型のモニターテレビが一般的だが、
昭和から平成の中期まで主流だった方式のテレビだ。
男がスイッチを入れると、
白黒の画面に見覚えのある女性が現れた。
「みっ!翠っ!!」
それは、
椅子に縛り付けられている最愛の恋人の姿だった。
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