第4話   スイカ割り

翠は大学の中でも目を引く存在だった。

物静かな感じだが、所謂モデルの様なスタイルで美人で有名だった。

彼女は誰とも付き合ってはいなかったが、

友人の九郎に紹介してもらい、蒼は付き合うことになった。


そんな翠と、

ついに一線を越えることが出来て幸せだった。

幸福の頂点だったハズだった。





だが・・・

何故か蒼は真っ暗な中で座っていた。


いや、

正確には「座らされていた」のだ。


手すりのある椅子に座らされている様で、

目は目隠しをされている。

両手はそれぞれ手すりに固定されて縛られ、

足も、足首で縛られていて椅子に固定されている。

痛いくらいに縛られ、全くビクともしない!


何が起きているのか理解できなかった!



『君が蒼クンかい? ようこそ西瓜村へ!』

目の前からそんな声が聞こえて来た。

と、同時に目隠しを外された。


どこかの古い工場の区画の様な場所におり、

燭台に乗ったロウソクが囲むように立っているのみで周りはよく見えない。



蒼の前にいるのは異様な姿の男だった。


頭からシーツの様なモノを被っている。

目と鼻や口の部分は穴が開いているが顔は分からない。

そして、黒と緑の縦縞が雷の様に上下に走っている。

まるでスイカの様な模様だ!


男の他にもスイカシーツの人間が四人おり、部下という感じに見える。



気が付けば、

蒼自身もスイカ模様の服を着せられていた。

白装束ならぬ、スイカ装束という感じだ。

生贄のようにも見える。



「おいっ!何だこれは! ふざけるな!」

蒼は幸せの頂点から、こんな状況になり怒り心頭だ!

通常の蒼だったら怯えていただろうが、高揚した感情が恐怖心を振り払っていた。



『ハハハ、元気だね!

君にはある儀式に参加してもらいたいんだ。

取りあえず、デモンストレーションをするから見ていてくれたまえ。』



そう男が言うと、

他の四人が何やら影から車輪付きのエンジンクレーンの様なモノを引き出してきた。

例によって、スイカ模様だ。

それと、蒼と同じ様に椅子に座らされているマネキンだ。

マネキンと言っても頭の部分にはスイカが設置されていた。


・・・凄く嫌な予感がする。



『じゃあ、頼むよ!』


男が呟くと、

部下らしきスイカシーツ男達がスイカクレーンの正面にマネキンを設置し、

クレーンの操作を始める。


ギチギチと音を上げながらクレーンが垂直になった。

クレーンの先端は金属製の丸棒だ。


「スイカ割りいきまーーーす!」

スイカシーツ男達が声を上げ、リモコン操作をすると、

勢い良くクレーンが下がり、

マネキンの頭の部分・・・スイカに命中した!


当然のようにスイカは木っ端みじんだ!

周りには粉々になったスイカが降り注いだ。


「大玉割りましたー!!!!」

スイカシーツ男達は興奮気味に叫んでいる。

その目はクスリでもやっているように焦点が合っていない。



『次は・・・蒼クンの番だよ?』


一番偉そうなスイカシーツ男は、

嬉しそうな顔でそう呟いたのだった。。。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る