Day18 忠告(お題:占い)

 雑踏から離れた路地裏に、一人の占い師がちょこんと小さな椅子に座っていた。フードで前が覆われているため、顔は見えないが、体格からして女性だろう。

 時々現れるという、占い師か。友人のアリッサが遠目で、他の人が占われているのを見たと言っていた。当たるかどうかは、占ってもらった人と話をしたことがないため、わからないという。


 少し立ち止まって見ていると、占い師が顔を上げた。

「ねえ、そこのお姉さん、占ってもいいかしら? お代は取りませんよ」

 占いませんか? ではなく、占ってもいい? しかも無料?

 怪訝な表情で占い師を見ると、彼女は手を横に振った。

「ごめんなさい、警戒させてしまいましたね。私、気になる未来が垣間見えた方には、もっと深く内容を知りたいので、お代なしで占わせてもらっているのです」

「なぜ、そんなことをするのですか? 貴女にはまったく得るものはないですよね?」

「いいえ、私の占い技術の向上に役立てられます。少しお時間をいただけませんか?」

 占い師は口元に笑みを浮かべた。

 新手の詐欺かと思ったが、気になる未来が見えたと言われると、こちらとしても気になるところだった。


 占い師に近づき、真正面に立つ。前にある椅子に座るよう促されるが、私は首を横に振った。

 肩をすくめられた後に、占い師は机の上にある水晶玉に手をかかげた。水晶玉の中が、霧がかかっていく。

 この水晶玉は魔法道具なのだろうか。そんな道具は記憶にある限り、認可されていないはずだ。彼女独自で作り出したものかもしれない。


 しばらくすると、占い師は目を大きく見開いた。そして間を取った後に、口を開く。

「……これから気をつけてください。何かに巻き込まれるかもしれません」

「何かに? 事件とかですか?」

「おそらく。慎重に行動し、信頼に与える人の言うことには素直に従った方がいいと思います」

 具体的な事件の内容を聞いたが、首を横に振られるだけだった。占いの結果というのは、だいたいが抽象的な言葉が多い。

 調子に乗って行動するなという、警告かもしれない。

 あまり得るものはなかったが、気を引き締めるきっかけにはなった。

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