Day13 機密性の高い道具(お題:流しそうめん)

「これが機密性の高い、魔法道具?」

 私は目を点にして、小部屋の中央を陣取っている、斜めになっている細長い板を見た。その板は竹を半分に割ったもののようで、深さがある物だった。

「それは東の地にある国で使用されている物を元に、作った魔法道具だ」

 グレンさんが説明書を見ながら板に近寄り、脇にあった作り物の細い麺を上に乗せる。ぴっぴっとボタンを押すと、上部の先端から水が流れ始めた。それと共に、麺が流れ落ちていく。そして桶に溜まっていた水の中に音をたてて、落ちた。

「魔法道具の名前を流しそうめんという」

「そうめんを流しているだけじゃないですか!」

 思わず即座に声をあげてしまう。これのどこが機密性の高いものなのだろうか。単純に、そうめんを流しているだけではないか。


 グレンさんは水を止め、脇にあった小冊子に手を取った。それは局で管理している道具の内部資料だ。

「この道具を使用するには、水を常に流し続ける必要がある。水を絶え間なく流し続けるところが、機密性の高さにつながったらしい」

「連続して流し続ける点が、ですか?」

「ああ。連続して魔法を出し続けるには、魔力を道具の中で循環させるようにしなければならない。この技術はかなり難しい」

「そうなんですね……、びっくりです。すごい道具なんですね」

 流しそうめんというよりも、水を流し続けるという点が重要なようだ。道具一つとっても、奥が深い。

 だが、その感想を一蹴するかのように、グレンさんはばっさり言い切る。

「技術的にはすごいかもしれないが、流しそうめんという点から言えば、水道代をかければ、魔法道具を使わなくても、誰でもできる。だから感激するほどでもない」

 その台詞、作った人には言わないでくださいよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る