Day12 保管場所(お題:門番)

 認可する際に、あらかじめ該当の魔法道具が書類と共に提出される。たいていの道具は局の地下に保管しているが、機密性が高いものについては、門番がいる壁で囲まれた中にある建物で厳重に保管されていた。

 提出された魔法道具は試作段階のものであるが、世に出る前に誰かの手に渡って悪用された場合、非常に多くの人に影響がでると考えられるからだ。

 私はグレンさんの付き添いで、その建物の前に来ていた。先日、先輩が認可を出した道具が、機密性が高いものだと言い渡されたからだ。

 グレンさんは身分証を門番に見せる。魔道管局の者であるという証明書だ。私も続いて門番にそれを見せた。

 二つの確認が終わると、門が開かれる。初めて来る場所に、やや緊張しながらも、敷地内に踏み行った。


 門を通り、少し離れたところに建物はある。真ん中にある尖塔が一番高く、両脇に少し低いものがある。まるでこじんまりした古いお城のような感じだった。

「あの建物の周りは、結界系の魔法がかけられている。門が突破されたとしても、周りにある結界によって、不審者は跳ね返される仕組みらしい。魔法をかけやすくするために、古くから結界の魔法が張られていた、この城を利用することに決めたそうだ」

「そうなんですね、城に結界が張られているなんて、びっくりです……」

「現代みたいに平和ではない時代は、城を防衛の拠点としていた。中にいる王族や市民らを守るために、結界を張っていたらしい」

 グレンさんがすらすらと説明してくれる。話を聞いていると、グレンさんはそれなりの頻度で、この城に来ているようだ。機密性の高い道具の認可については、経験の長い人が受けもつことが多い。グレンさんも課では中堅的な立場になり、経験も豊富になってきたため、重めの仕事を頼まれることが増えたようだ。


「今日は時間をたっぷりとってある。気になる道具があれば、見てみるといい」

「いいんですか!?」

 機密性の高い道具など、普段から軽々と手に取れるものではない。そんな自由な行動が許されていいのだろうか。

 グレンさんは目を丸くしている。

「ああ、別に構わない。ケイトも魔道管局の一員だろう? ここで見たことは他言しないことくらい、わかっているだろう。本当に危険な道具は、鍵のついた部屋に保管してある。それさえ手に触れなければ、問題はない」

 入局する前に、業務上知り得たものは口外しないよう、念押しされている。

 道具の認可を出すために、様々な書類に目を通す。企業が独自に編み出したであろう技術や、個人情報など、部外者に話してはならない内容もたくさん見ていた。それらはもちろん今までも、そしてこれからも外部の者に話してはいけないのは心得ている。

「もちろん、誰にも言いませんよ。俄然楽しみになってきました!」

 グレンさんの付き添いとして来たが、思わぬ楽しみも増えた。

 足取りが軽くなったのを感じながら、城の中へと入っていった。

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