Day11 息抜き(お題:飴色)
「これ、すごく美味しい! こんな店があるなんて、知らなかった。サミー、よく知っていたね」
雨が上がった数日後、後輩のサミーに誘われて、裏路地にある洋食屋に連れて行ってもらった。サミーは頭をかきながら答える。
「……友人に教えてもらいました。美味しい店だけれども、男一人では行きにくい場所って聞いていたので、先輩もどうかなって」
確かに彼の言うとおり、店のほとんどが女性客である。たまに女性客の連れらしい男性客もいるが、男性一人という客はいなかった。
「それに先輩、最近少し疲れていそうだったから、息抜きにと思って」
ああ、後輩にも心配されている。この時期は他の人から見ても、いまだに私は調子が悪そうに見えるらしい。
「……すすす、すみません、もしかして色々とご迷惑で、余計なお世話だったかもしれないのに、本日はありがとうございます!」
言葉の流れがおかしくなっているぞ、サミー。
私は水を少しだけ飲んで、口元に笑みを浮かべて、後輩の顔を見る。
「この時期は色々と考え事が多くて。それと仕事も結構重い案件をいくつか受けているのもあって、サミーに疲れているって見えたのかもね。ありがとう、気を使ってくれて」
にこやかに微笑みながら礼を言うと、サミーはぼうっとしたかと思うと、すぐに我に戻って目の前にあるハッシュドビーフを勢いよく食べ始めた。
美味しいハッシュドビーフを看板メニューにしているお店。タマネギを飴色になるまで、きっちりと炒めているのが売りらしい。手間暇かけて作ることで、味に深みが増し、美味しくなるのだろう。
そういえば、久しぶりに外で昼ご飯を食べている。最近は店で買ったものや、持参したお弁当ですませて、中にこもりっぱなしだった。たまには外に出て、息抜きもいいかもしれない。
「サミー、また美味しい店を教えてもらったら、私にも教えてくれる?」
軽く言うと、後輩は表情を明るくして、何度も頷いた。
「はい、もちろん! よかったら、次も一緒に行きましょう!」
「そうね、時間があえばね」
気晴らしは大切だ。
改めてありがとう、サミー。
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