Day10 繰り返さない(お題:ぽつぽつ)

 雨がよく降るこの季節は、特に昔のことを思い出し、何も手をつけられなくなってしまうことがある。

 仕事中、激しく雨が降っているのを見て、同僚に話しかけられなければ、しばらく固まっていた日さえあった。


 なぜ、あの日、雨はぽたぽたではなく、ざーざーと激しく降ってしまったのだろうか。それが何日も続けば、町の田畑が水没してしまうのは当然である。


 ぽたぽたで良かった。土に潤いを与える程度で十分だった。

 しかし、お気に入りの場所だった花畑は消えてしまった。

 町の名産品を作っていた、畑も水の底に沈んだ。

 そして、近くの川が氾濫し、その様子を見に行っていた人たちが数名流されて亡くなった――。


 あの日を境にして、私の町は変わってしまった。復興するのに長い年月が必要だった。ようやくそれなりの水準まで戻ったときは、私が魔法道具管理局に入局するときだった。

 小さな花畑ができたのを見て、私は安心して、町を離れることができた。



 魔法道具管理局の道具認可部で働き始め、道具を認可するときはかなり入念に調べられていることがわかった。

 そこでは、毎日かなりの量の道具が認可を受けようと持ってこられる。それに対して、常に一定水準以上の審査をするには、膨大な時間と相応の知識が必要だった。


 私はまだまだ経験が乏しい。認可しようと思い、上に判断を仰いでも、だいたいが調べ足りないと言われて、一度返される。認可が遅いと事業者に怒られたことがあった。

 だが、それを繰り返すことで、きっと力は付いてくると信じている。


 ぽたぽたの予定だった雨が、ざーざーにならないよう、二度とあのような悲劇は起こさないために、雨が降る度に、決意を新たにしている。

  

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